愛して恋して ≪アバンティーズ 短編集≫

好き　*エイジ ページ9

えいちゃんが海外に行った

　はじめしゃちょーさんと海外に行った

　私を一人、この広い家に置いて言って

「…国際電話」

　いなくなって二日目。私は早くも限界を迎えていた

　寂しいと言うか、悲しい

　別れたら私ダメ人間になるな

　そんな寂しい女の愚痴をそらくん達に聞いてもらっていたら

　とうとうちょっとお金はかかると言う禁断の果実、国際電話と言う名を教えてもらった

　電話なんて普段はしないから頭になかった

　私は少しでも声が聴きたい一心で通話ボタンを押す

　何コールで出るかな。なんてちょっと思ってたら

　2コールで出てくれた

「……A？」

　小さくそう呼んでくれる

　なんだかそれだけで感極まってしまう

　思わずこぼれた涙を拭って私も声が震えない様に名前を呼んだ

「なに？泣いてんの？」

　後ろからはえっ誰！なんて、多分はじめしゃちょーさんだ

「泣いてないっ！」

「泣いてんじゃん」

　電話で分かるものなの？私は結局震えた声で鼻の調子が悪いの、と理由づける

「えいちゃん…早く帰ってきて…」

　鼻をすすりながらそう言うと、えいちゃんのいつもの笑い声が聞こえた

「…A可愛い」

　…何だかバカにされている気がする

「えー！そうですよ！二日も我慢できないの！！ばーか！！」

　思わず大きな声を上げると、彼はますます笑う

　何か嬉しいわ。なんて言うのだ

「ねぇ。オレが帰ってきたら何してほしい？」
　
　何でも聞くよ。とでも言う様に彼は私に問いかける

　私は近くにあったティッシュを手探りで取って目元を拭く

「……抱きしめて」

「ん？」

「ばかえいじ」

　そうして一生離さないで欲しい

　私、あなたが思っている以上に好きなの

　そんなこと恥ずかしくて言えないけど

　帰ってきたら珍しく言ってあげる

　彼はいつもの様に優しく声を出した

「すぐ帰るよ」

夢　*ツリメ→←怒り　*リクヲ

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