９〜万理side〜 ページ10
テレビにAが出ている。新曲発表だ。
前は「自己愛と利他愛がぶつかった曲」みたいなことを言っていた。
……気付いてるよ。でも、気付かないフリ。
ずるいだろ？ 臆病だろ？
……嫌われるのが、怖いんだ。
『神畷さん、新曲だって？』
『はい。頑張りました』
ミスター下岡さんにAが受け答える。
「神畷さんだ！」
「陸くん……。……一織くんにナギくんも」
他の4人は何をしてるのだろうか……。
まあ、いいか。
『それではシンガーソングライター神畷Aの新曲、"心壊サミット"！ テレビ初披露！』
曲が流れる。
煮詰まって煮詰まって、人生呪いたいと言ってできた曲。
Aは才能がある。
だから、磨り減らさなきゃ。
Aは千とは違う。
Aは、自分の心や気持ちを切り売りするタイプだから。
その時その時でブレたり、似たり寄ったりになったりする。
だから、俺は告白しないよ。
だって、俺は千とお前を音楽で食わせたかったから。
Aは繊細で、透明で、脆いから。
時には才能が牙を向くかもしれないけれど、それでも俺はお前の心を削るよ。
本当にダメになる前には助けるから。
だから、嫌いにならないでほしい。
臆病だから、言い訳しかできない。
けど、お願いだから許してほしい。
「……万理さん……？」
「どうかしましたか？」
「……いや、なんでもないよ」
陸くんと一織くんに気を使われるなんて……。
「……まるで歌姫のようでした。しかし曲は暗めというか……むずかしいですね」
ナギくん……。歌姫……歌姫か……。
それはそうと確かにそうだ。
曲が……歌詞が暗い感じがする。
でも、そこもいいんだ。
「Aの他の曲も聞いてみる？ CDあるからさ」
「後学の為に、7人全員で見ましょう」
一織くんの案に二人はノった。
「……ごめん」
誰にも聞こえないように呟いた。
俺はお前の気持ちには応えられないよ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 113人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
通りすがり - あるさん» コメント、ありがとうございます！ 離れないですね(笑) ゲームのイベントでもネタにしてましたし……(笑) (2019年8月11日 7時) (
レス) id: d17bf84966 (このIDを非表示/違反報告)
ある(プロフ) - 黒い水頭から離れませんよね！ (2019年8月4日 18時) (レス) id: 28bf0a40fd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：通りすがり | 作成日時：2019年7月21日 9時
