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そのホテルはそんなに大きくは無くて、山の中に隠れるように建っていた。
一応、ネットなんかで色々探して見付けた場所だ。
『綺麗なホテル』とか『記念日』とか『女子ウケ』とかのキーワードでグーグル先生に訊ねた訳だ。
あの履歴を生徒にでも見られたら、オレ羞恥で即死しそう。
いざ辿り着くと、まさに女の子の好きそうな佇まいでグーグル先生やるなぁと思う。
きっとAはお城みたいなホテルより、落ち着いた雰囲気の方が好きだろうと思ってアジアンテイストなホテルにしたのは正解だったはず。
Aはロビーに入った瞬間からキョロキョロして、すぐに「素敵だね」と微笑んだ。
ほら、正解。
部屋もダークブラウン基調で、テラスなんかもあって外の緑を借景してる。
すぐにテラスに出たAはわざとらしく深呼吸なんかしちゃってて、はしゃいでんなー...と笑ってしまう。
「和也くんも出て来たら良いのに」
「そこ、煙草OKっぽい？」
「え？あ、うん。テーブルに灰皿置いてある」
「じゃあ行く」
煙草とライターを持ってテラスに出て、そこに置いてある籐の椅子に腰掛けた。
良い天気。
この季節らしく暑くも寒くもなくて気持ちが良い。
Aの言う通り、小さなテーブルの上には灰皿。
煙草を口に咥え火を点けると、彼女も隣の椅子に座った。
「あの...」
「ん？」
あの...、ともう一度言ったAを見ると何故か背筋を伸ばして緊張した面持ちで小さく息を吐き出してる。
「どったの」
「私、和也くんに言わなきゃいけない事があって...」
「うん」
「あー...でもやっぱり、夕飯の後にする！」
バッと立ち上がったAの腕を引っ張って、もう一回座らせる。
「いやいやいや、気になるでしょ」
「んー...」
「何。言いにくい事？」
「...ちょっと...」
「浮気でもした？」
「何それ！！するワケ無い！！」
また立ち上った彼女の腕を、また引っ張って、また座らせる。
「うそうそ。Aはそんな器用じゃ無いよね？」
「もし器用でも浮気なんかしない！」
真っ直ぐな目。
「ごめん」
「そうだよ」
「...何でオレが謝ってんの？」
Aが、アハッと笑った。
「で？何の話？」
「...また後で、でも良い？」
「まぁ良いけど。心構えしといた方が良い話？」
「...うん、少しだけ」
笑顔がスルっと剥がれる。
何だか、悲しそうってより不安そうな顔。
思わず、ポンポンと頭を撫でた。
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作者名：rei
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=reika72
作成日時：2017年1月18日 21時
