色恋戦線 2nd【ars K.N】 (ページ27)

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「...降伏...って...？」

ゾクっとしたのは、その声が初めて聴いた熱っぽさを抱いてたから。

「そのままだよ。降伏。言葉の意味は...分かる？」
「...自分が負けた事を認める...コト...？」
「正解。その意味で、間違ってない」
「先生...私に負けたの...？」

さっきはあんなに大人っぽい声を出したくせに、またいつも通り。
こうやってオレはきっと、もう既に振り回されてる。

「お前がオレに勝負を挑んでたんだとしたら...」
「.....」
「オレはお前に負けた」

頬を抓ってた指を開き、その頬を包む。

「オレ、ね」
「.....」
「勝手にお前はまたオレに会いに来るんじゃねぇかな？って思ってたのよ、先週の日曜」
「先週.....」
「お前が来たらオレ、どんな顔したら良いのかな...とか。こないだ、あんな風に言ってしまったしな...とかね」
「.....」
「ずっとそんなコト考えてた。きっとオレは...」

触れ合ってた額を離すと、キミの顔が見えた。

「結城を待ってた」

キミはオレの言葉を驚いたような表情で聴いて、すぐにキュウっと眉間に力を入れてるのが分かった。

その表情が愛おしくて、どうしようもなかった。

「気付いたら閉店の時間まで居座ってた。でも、お前は来なかったね」
「......」
「あんなに会いたくないと思ってたのに。自分からお前を拒否したのに」
「.....」
「会いたくて、仕方なかった」

言葉は、文字よりも声にしてしまった方が実感するものだ。

オレは、こんなに結城に会いたかったんだって

こんなにも、結城を抱き締めたかったんだって

頭痛くなる位に実感しながら、キミを腕の中に閉じ込める。

「汚したくないと思ったのに...」
「...先生...」
「制御しなきゃと思ったのに...」
「.....」
「もう無理だ...」

キミの香りが、押さえてた色んな想いをひとつひとつ壊して行く。

殻に閉じ込めてた物を、ガンガンと破って行く。

「お前との距離を開けた理由、オレが教師でお前が元生徒だからだって...結城は思ってる？」
「はい...」
「だよね、そう言ったもんな。オレ」

結城を抱き締めながら、少し息を整えた。
声が震えそうになるから、奥歯に力を入れた。

「確かにオレは教師だ。でも、お前はもう卒業してるし成人もしてる」
「.....」
「この関係で何が起きようが、倫理的にも世間的にも別に問題は無いんだよね」

彼女の背中でトントンと指を動かし、ゆっくりと話す。

ゆっくり、オレの想いを伝える。