色恋戦線 2nd【ars K.N】 (ページ24)

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「お前さぁ...」

視線を上げて結城を見たら、彼女もオレを見てた。

「どうして花嵐堂に居ないのよ」
「...え...」
「いつだって花嵐堂にはお前が居たでしょ？」
「......」

オレがそう言うと、結城はちょっと口をギュっとへの字にする。

「...先生が先に居なくなったんです」
「あー...そうか、そうだな」
「でも、どうしても先生に会いたかった」

胸が、大きな音を立てた。
やめてよ、ホントこんなの柄じゃないって。

「会いたかったから、ここに来たんです。...先生、居なかったけど。でも...会えた」

グルグル巻いてるマフラーが邪魔なのか首を振ってるから、グイっとそれを下げてやる。
何だか少し不満げで、でも一応感謝の印なのかペコっと会釈するのがコイツらしい。

「私、先生を困らせに来たんです」
「......」
「私で困って欲しい」

......何て台詞を吐くんだよ。

好きなオンナにそんな事言われて、何も感じないオトコが居ると思う？

「先生、私はずっと先生に勝負を挑んでたんです」
「勝負？」
「先生はすっごく強敵で勝てそうにも無かったけど、それでも降伏させたかった」
「アハッ、降伏か」
「『参った！』って言わせたかった。でも、やっぱり先生は強敵だった。レベル1のヘナチョコがラスボスと戦ってる感じ」

かと思ったら『ラスボス』とか言い出すし、何だよ、もう。

「太刀打ちできないのなら、せめて困らせたかった。少しでも先生の頭の中に自分の存在を残したかったんです」
「...うん」
「だから、私は先生を困らせてやります」

全然困ってなんか無いんだけど。
キミがそう言うなら、困ったような顔をしておいてやろうって

そう思ってたのに。

「先生が好き」

まだ少年の頃に初めて女の子に告白された時のような

そんな気持ちになって、ちょっと眩暈がした。

「もう、私にできる事はこれ以上ありません」
「......」
「やっぱりラスボスには勝てなかったとしても、私は『見事な散り際だった』と自分を褒めてあげたいです」

見事だよ。

見事な、咲きっぷりだ。

「先生以外の人に恋するのは、私には難しい事でした」

いつの間にそんなオトナになったのよ。
オレの方が置いてけぼりを喰らった気分だ。

「結城」
「...はい」
「ついておいで」
「え...」

だったら新しい時間を紡ごうじゃないか。

「お前の願い、叶えてあげるよ」

この先一緒に歩いて行く為に、まず同じ場所に並んで立とう。