色恋戦線 2nd【ars K.N】 (ページ19)

今日:11 hit、昨日:5 hit、合計:1,600,841 hit

４９ページ19

「正解かどうかを決めるのは、カズ君自身よ？」

ばーちゃんが、優しい声で言う。

「カズ君が納得出来てる事なら正解だし、カズ君が後悔してたり悲しいんなら不正解だし」
「......」
「世間体や倫理とかそういう部分での『正解不正解』はあるのかもしれないけど、それは他人が言ってるだけの事よ」
「...オレが人の道から外れてもそう言える？」
「私はカズ君の味方よ」

涼しい顔で紅茶を飲んでるばーちゃんが

「例えばカズ君が人を殺めて逃げて来たって、私は貴方を守るし貴方の為に嘘だってつくわよ」

なんて言うから

「さすがに犯罪はおかさないって」

って笑うと「利己的なカズくんがそんな不利益な事をしないのは分かってるけどね？」って、また涼しい顔。

「アハッ！利己的って若干、悪口だかんね？」
「そう？褒めたつもりよ？」

オレの性格は両親よりもばーちゃん似だな、と再認識する。

「カズ君、ありがちだけど人生は一度きりなのよ？」
「うん」
「後悔なんて、時間の無駄だと思わない？」
「......」
「好きに生きたら良いのよ。自分勝手に生きたら良いのよ。貴方の人生なんだから」

極論だなと思ったけど、心は軽くなった気がした。

「ありがと、ばーちゃん」
「何に悩んでるのか分からないけど、吹っ切れた？」
「吹っ切るにはまだちょっと時間欲しいけど...まぁ、前向きになれそうな気がする」
「色恋ゴトかしら？」

ばーちゃんが、何だか嬉しそうに言うもんだから苦笑い。

「孫のイロコイなんて、聞きたい？」
「あの小さかったカズ君が...って思ったら感慨深いじゃない」
「もう三十路だし、感慨深いも何も無いでしょうよ」

ダハッと笑うと、ばーちゃんは「そう言えばそうね」と思い出したように目を開いた。

暫くばーちゃんとお茶して、明日は仕事だし帰ろうと立ち上がる。

「御馳走様」
「運転、気を付けなさいね？」
「はーい」

玄関まで、送ってくれたばーちゃんがオレがドアを開けたと同時に「あ！」と言った。

「どしたの？」
「来週、私お友達と旅行だから甘えに来ても誰も居ないからね」
「甘えって...誰が甘えてんのよ」
「フフッ」
「ンフフ。旅行、楽しんでおいでよ。相変わらず元気だね」

バイバイ、とヒラヒラ手を振るとばーちゃんも手を振った。

帰りの車の中で、恋愛の別離を歌った曲が流れて来た。

小さく口ずさむと、声が震えた事に気付いてすぐにやめた。

ちょっとした色んな事に、自分がどれだけ弱ってるのかを思い知らされる。