色恋戦線【ars K.N】 (ページ41)

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書き上げたそれはまるで、若くてキラキラしてる男性アイドルグループが歌うような歌詞だった。

新曲できたから、って土曜に大野さんの実家までギターを積んだ車を走らせたんだけど土曜の料亭は忙しそうで、オレは休憩時間になるまで大野さんの部屋で待たせて貰いながらギターを弾いた。

お昼の営業を終えて部屋に戻って来て、出来上がった歌詞を読んだ彼はポカンと口を開いた。

「...これを、おれが歌うの？」
「うん、良いじゃん。ネタみたいで面白いでしょ？」
「よくこんなキラキラした歌詞が書けるね、...オッサンなのに」
「褒め言葉として受け取っとくわ」

自分でもちょっとビックリのキラキラ感。
高校生の初恋みたいな、そんな雰囲気。

年下の子に恋してると、オッサンでもこんな気持ちになるのか！？と戸惑いながらも書いた歌詞。
出来上がったら笑っちゃう位だったけど、もうそれはそれで面白いか！とそのままにした。

「でも、メロディラインは結構泣きメロだから」

そう言ってギターを弾き、小さく歌って見せると大野さんは首を上下に軽く揺らしながら身体の中にメロディを入れ込んで行ってる。

「確かに面白いね、メロディは切ないのに歌詞は超キラキラ」
「でしょ？」
「ふーん...『ミルクティー』かぁ。ふふっ、可愛いタイトル」
「オレが可愛いから仕方無いよね」
「可愛いかぁ？まぁ可愛いか」
「おい、そこは可愛くねぇよ！って突っ込めや！」

ダハハ！と笑い合って、大野さんと何度か歌って合わせてみる。

【僕の苦手なミルクティーを好きな君を
　僕が好きになったのはきっと必然で】

【一緒に見た夜桜や大輪の花火
　季節が変わったら今度は月を見よう】

「ホント、可愛い歌詞なんだけど実体験？」

大野さんがちょっと笑いながら訊いて来た。

「まさか」
「そっか」
「そうよ」

【その真っ白な唇で
　僕に触れてはくれないか】

【誰の物でも無かった唇に
　触れさせてはくれないか】

キミがまだ誰の物にもなった事が無いなんて、そんなのオレの想像でしか無いけど

これはきっと、オレの希望。

オトコなんて、本当は独占欲の塊なんだよ。
自分の前に他のオトコがキミを抱いてたなんて、考えたくない訳よ。

キラキラした歌詞の中に、こんな言葉を入れてしまう自分はやっぱりどこか汚いオトナなんだろうなと思うけど。

「これ、初恋の歌なの？」
「どうだろ。ある意味、初恋なんじゃない？」
「ある意味って何」

大野さんが、ふふっと笑った。