色恋戦線【ars K.N】 (ページ30)

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途中、煙草を買う為に寄ったコンビニでキミにミルクティーを買って

お菓子売り場を突っ切ってる時に、目の端に懐かしいチョコが入って来た。

「オレ、これ好きだったなー...」

透明な容器に入った小粒のチョコ。

ばあちゃんがよく買ってくれてた。
小さなチョコをチマチマ食べるのが好きだった。

何となくそれも手に取ってレジに出す。

...何かオレ、餌付けしてるみたいじゃない？
キミに懐いて貰う為に、あれやこれや餌を与えてるみたい。

だけど

「くれるんですか...？」

高い物でも無いのに嬉しそうに笑う顔を見たら、餌付けだってしたくなる。
オトコなんて、そんなモン。

道を忘れた振りして、ちょっと遠回りすればよかった...なんて悪巧みが頭をよぎったのはもうキミのマンションに着いてからだった。

とりあえず停めた車から出て、煙草を一本。
フゥ...と雨上がりの暗い空に向かって紫煙を細く吐き出すと、ゆらゆら、揺れながら昇って行く。

「...先生...」
「んー？」

キミの声に、視線だけをそっちに向けた。

「...先生の足元には、屍体が埋まってるんですか...？」

心臓を、ギュっと握られた気がした。

「......何でも無いです」

キミは俯いて、ヘヘッと笑う。
まだ乾いてない髪が、パラリとキミの顔を隠した。

「問１」

携帯灰皿に煙草を押し付ける。
動揺を、見せないように。

「作者の言葉の真意は何か。『桜の樹の下には』を参考に答えよ」
「......」
「問２」

キミの前まで歩いて、向かい合う。

「作者は何故、言い留まったのか」
「......」
「作者の気持ちと併せて答えよ」
「...あの...え...？」
「この場合の『作者』は『結城A』とする」

きっとキミは、冗談で言っただけなのに

その言葉にこんなにも揺さぶられてしまってる自分が恥ずかしくて

「もう帰りなさい」
「...先生、...あの...」
「ボヤっとしてたら、また雷になるかもよ？」

ごめんね。

オトナは上手く、嘘をつく。

それでも少しだけ、気にさせてしまうような事を言ってしまうのは

あれは何だったんだろう？って、思い出して欲しいから。

ごめんね。

オトナは上手く、想いを零す。

「じゃあね」

車に一人乗り込み、バックミラーでキミを見る。

濡れた地面の上、こちらを見て立ってるキミ。

「......足元に屍体が埋まってんのはどっちよ...」

少女は静かに、花を咲かせる。

「勝手に綺麗になっちゃって...」

美しく芳しい香りを放って。