色恋戦線【ars K.N】 (ページ15)

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休むかな...と思っていた。

女子ってのは年齢関係無く、『構ってちゃん』とでも言うのか自分が可哀想に見える言動をして気を引こうとしたりするタイプが多い。

だけど、彼女は自分の席にいつものように座っていた。
真っ直ぐ、オレを見て目を逸らそうともしなかった。

「みんな、おはよ。出席とるよー」

オレがそう言うと、彼女は目を閉じる。
これも毎日の事だった。

何でそうするのか、オレには理解できなかったけどきっとそれが彼女の習慣なんだろう。

昨日、あんな事があっても彼女は自分のリズムを変えなかった。

「結城」

閉じていた目が、ゆっくり開かれる。

「...はい」

その口元が、少しだけ微笑んだように見えた。

少しだけ

背筋が、ビリ...と痺れたような感覚。

あぁ、いつもと同じだ。
良かった、アイツはそんなに傷付いてない。
強い女の子だったんだ。

オレはきっと、そう思いたくて

自分を安心させてやりたかったんだ。

「Aっ！？」

突然の大声に視線を向けると、そこには椅子から落ちて床に倒れてる彼女の姿があった。

教室中がザワつき始める。

「結城！！」

彼女の周りに集まり始める生徒達を押し退けるようにして、その青白い顔に手を添える。

「おい、結城！」

ペチペチと軽く叩いてみても、何の反応も無い。

「嘘だろ...」

しかもすっげぇ熱い。

「ちょっとコイツ保健室連れて行って来るわ」

躊躇ったのは、一瞬だった。

彼女の身体を横抱きにして立ち上がると、男子生徒の何人かが冷やかすように声を上げたからジロリと睨んでやると

肩をすくめて、頭を下げた。

彼女を抱いて、廊下を歩く。

驚くほどに、その身体は軽くて

コイツこんなに壊れそうに小さかったのか...と、愕然とした。

まだ18年しか生きてない女の子が、強いはずが無い。

「戸田ちゃーん」

閉まってる保健室のドアの外から中に向かって声を掛ける。

「はいはーい？わっ、どうしたの！？」

保険医の戸田ちゃんが、オレの腕の中でグッタリしてる彼女を見て慌てた様子でその額に手を当てた。

「...すごい熱...」
「何か、意識失くしちゃったみたいで。椅子から落ちたんだよね」
「あ、ホント。ちょっと肘に打ち身出来てる」

彼女の細い腕に、黒い痣。

「寝かせといてやって。親御さんにはオレから連絡入れとくわ」

真っ白なベッドに彼女を寝かせて、オレは保健室を出た。

さっきまで彼女を抱いてた腕には、少しだけ怠さが残っていた。