第五十三話「引き金」 ページ4
『……まっ』
「異能特務課の潜入捜査官の割には、ひ弱だね」
痺れの所為で抵抗が出来ない。
特務課の人達は苦虫を噛み潰したような表情で此方を見ているだけ。
「……何が望みだ」
不意に声が上がった。
太宰そちらに視線を向けると種田が睨んでいた。
「……そんなの無いよ。
ただマフィアの首領がこの人を見せしめに殺せって云ったからそうしてるだけ」
太宰が笑う。
種田は目を伏せて考え込んだ。
「却説、僕はもう疲れてきちゃったら殺るね」
「 「 「 !? 」 」 」
『……離……し……て……』
「駄ァ目」
銃口が私の頭に向けられる。
目隠しが少しズレてふと太宰の目が見えた。
恐怖が体を襲った。
怖い、嫌だ、死にたくない。
いくら生き返ると判っていても一度は死ぬのだ。
死の恐怖を味わうのだ、嫌だ……早く、早く終わって。
「……待て」
種田が静かに云った。
太宰は視線だけ種田に向ける。
「其奴は特務課にとって必要不可欠な人材。殺されては困る」
「僕だってこの子を殺さないと困る」
「取引をせんか、小僧」
その言葉に太宰はニヤリと口角を上げる。
「……取引?どんな?」
「そうやなぁ、喩えば儂の首をやると云ったらどうや」
その言葉に太宰以外が驚いた。
何故、私の為に自分の命を……
「は?要らない」
返事が早い!
太宰よ、お願いだからちゃんと演じてね??
なんかどす黒いオーラ出てんだけど?
私、心配だよ??
「そんな首貰っても嬉しくないし」
「お前が嬉しくなくとも其方の首領が喜ぶ」
バチッと火花が散った。
てかこれ早く終わんないかな?
マジで私、首もげそう。
「……ほんと、つまんないね」
太宰はそう呟いて私の頭に銃口を向けたまま、引き金を引いた。
「やめろ!!!」
────バンッ!!!!
種田の声と銃声がほぼ同時だった。
それだけは覚えている。
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「……あ、起きた」
目を開けると目の前には太宰の顔。
恐ろしく整った顔に私は眉を顰める。
「お疲れ様、上手くいったよ」
『……お疲れ様』
「なんか怒ってる?」
『この世界の人って何でこんなに美形が多いの?』
「……それって僕を見て云ったの?」
頷くと太宰は嬉しそうに笑った。
うわ、改めて思うけど本当に綺麗な顔。
そんな事を思う程、私は落ち着いていた。
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作者名:らしろ | 作成日時:2020年8月10日 1時