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その後4 ページ29

『ちょっ……太宰さ』



「ずっと……ずっと八年間。私は我慢したんだよ。これくらい許してくれ」




そんな辛そうな声で云われると流石の私も反撃する気力も無くなる。




『……辛かったですか』




声に出してハッとする。


先程から辛いと云っているのにまたそれを聞く!?


何を云ってるんだ私は!




「辛かった、本当に。何度本気で死のうとしたか。
私は一途に君だけを想ってここまで来た。その甲斐あってまた君と巡り逢えた。
二度と……逢えないと思っていたから……だから……もう手離したくない。
……ずっと傍にいるよ、A」




彼の本気の言葉に私の胸の鼓動は先程から止むことを知らない。


というかよくよく考えると今の言葉、なんかプロポーズに近くありません?




「……明日」



『……え』



「明日、デェトしよう」






────その日は僕と出掛けよう



────購い物デェトねぇ。ふふ、判った



────罰として遊園地デェト追加ね




あの時約束したデェトがやっと明日果たせる。




『……何処に行くの?』



「購い物デェトはどう?そして遊園地にも行って……それと水族館に行って、旅館に泊まって夜にはイチャイチャしよう」




あの時と同じ言葉。


また彼と同じ会話ができるなんて思ってもみなかった。


もう二度と彼と逢うことは無いと思っていたから。




「……無言は肯定と受け取っていいんだね」



『……へ?何?』



「否、何でもない。今更拒否されても困るからね」



『……?拒否するわけないじゃん。行くよ、デェト』




太宰は少し間を開けて笑った。


私は訳が分からず眉をひそめただけ。


けれどこの時間がとてつもなく心地良かった。





「……明日の為にもう寝よう」



『そうだね、おやすみなさい』



「おやすみ、A」




再び目を瞑った。


それからの記憶はない、きっと直ぐに眠れたのだろう。


太宰の私を呼ぶ声が聞こえたような気がした。





━━━━━━━━
━━━━
━━




『……』




頭に違和感があり徐々に意識が浮上する。


誰かが頭を撫でている。


誰かが私を抱き締めている。



……言わずもがな太宰しかいないのだが。




「……あ、起きた」



『……なにやってんの』



「倖せを噛み締めてる」



『……善かったね』




そう呟いて目を閉じる。

直ぐに二度寝をしたいのだが……




「はぁい、起きようね〜」




太宰に布団を剥ぎ取られたのだった。


.

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作者名:らしろ | 作成日時:2020年8月10日 1時

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