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その後3 ページ28

「やましい事はないから……ね?」



『何を今更。絶対に嫌だよ』




断固拒否!!


私は目の前で意味深に笑う彼を思いっきり睨む。




「A」



『駄目』



「寂しかった」



『……っ』



「今日だけでも」



『……』



「……辛かったんだ」




太宰の震えた声が私の鼓膜を刺激する。


私は八年も目を覚まさなかったからそんな長い年月が経っている実感がない。


だからこそ太宰はこの八年、私がいなくて相当心にきただろう。


それに原作通りに行けば友人であった彼も────




『判った、今日だけね』



「……うん、ありがとう」



太宰は柔らかい笑みを浮かべて嬉しそうに頷いた。



━━━━━━
━━━




「おいで!A!」



『お願いだから端に行って!近付かないでね!?』




あの頃とは違い、互いにもう立派な大人。



やはりベッドに二人きりというのは躊躇する。




『こんな事になるならもっと大きなベッドを購えばよかった』



「私としては最高の大きさだけど」



『判ったからもっと壁にくっ付いて』




というか、今更だが此奴はまだ私の事が好きなのだろうか?


だって見た目はあの金髪の美少女の舞姫ではない。


黒髪でどこにでも居そうな平凡な女の子なのだ。


容姿は断然舞姫の方が可愛い。




『出来れば寝返り打たないでね?おやすみ』



「ふふ、おやすみ」




嬉しそうな声が後ろから聞こえる。



……まぁ、彼がそれでいいのならいいか。



私は目を瞑った。




━━━━━━━━
━━━━━
━━




────眠れん!




パチリと目を開けて静かに溜息を吐く。


いつもならすんなり眠れるのに。


きっと太宰がいるからだ。


いつもと違う空間だから緊張しているのだろう。




「……眠れないの?」



『!!』




不意に声が聞こえて驚いて声が出そうだったが何とか耐える。




『……あ、うん……』



「もしかして緊張してる?」



『……別に』



「強がってるAも可愛い」



『はいはい』




口を開けば口説き文句しか出てこないのかこの男は。

流石だな。




「抱き締めていい?」



『それ以上近付いたらぶん殴る』



「うん、いいよ」




えっ?殴っていいの?


殴られたいの?ドMなの???




「君を抱き締めることが出来るのなら、何でもする」




私のお腹あたりに彼の腕が巻き付き、背中はピッタリと太宰の体にくっつく。



一瞬、息をするのを忘れてしまった。


.

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作者名:らしろ | 作成日時:2020年8月10日 1時

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