その後 2 ページ27
『ふふん〜ふふ〜、完成!』
お爺さん───夏目先生が用意してくれた小さい一軒家で私は料理をしていた。
夏目先生は全然帰ってこないし、舞姫も夜にしか顔を出さないからほぼ一人暮らし状態だ。
かくいう私もその生活がちょうど良かった。
『蟹チャーハン、久し振りに作った。昔はよく作ってたのにな』
その他に水餃子、酢豚など作った。
今日は中華だ。
『大量に作ったから明日でも食べれるな〜。あ、雨降ってきた!?』
そういえば夜から雨だと云っていた。
急いで洗濯物を取り込みやっと一段落ついた。
さぁ!ご飯を食べよう!
────ピンポーン
……と思ったら誰か来た。
誰だろう?舞姫?夏目先生?
否、どちらにせよ無断で這入って来るから違う。
私は水餃子が入っている鍋からお玉を取り出し玄関へ向かう。
そして恐る恐る扉を開ける。
砂色が視界いっぱいに広がった。
カランっとお玉が音を立てて手から滑り落ちた。
『……太宰……さ……ん?』
見慣れた顔を見て私は声が震えた。
そこにはずぶ濡れの太宰が花束を持って立っていた。
彼は瞳を大きく見開いてやがて柔らかな笑みを浮かべた。
「……見つけた」
彼はそう云って私を抱き締めた。
その腕が数年前と違って強くて逞しくて……
凄く温かくて自然と涙が零れ落ちた。
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『……舞姫から聞いたんだね』
「……そう、全速力で来たよ」
『太宰さんらしいや。ところで蟹チャーハン美味しい?』
「当たり前だろう?美味しすぎるよ」
『良かった、料理の腕は鈍ってないみたい』
あれから風呂に入り、舞姫がいつの間にか置いていた男性用の服を着た太宰と私は夕食を共にしている。
「夢みたいだ」
『夢じゃないよ……まぁでも私も同じこと思ってたけど』
お茶を飲んでふぅと心臓を落ち着かせる。
目の前には逢いたかった太宰がいる。
この光景もずっとずっと夢にまで見たものだ。
「ねぇ、A」
『如何したの』
「今日、泊まってっていい?」
彼の言葉に私の箸を持つ手が止まる。
きっと深い意味はないはずだ、うん。
『いいよ、一部屋空いてるからそこに……』
「Aと同じ部屋がいい。願わくば同じ蒲団で寝たい」
『黙って変態』
溜息を吐いて私より年上になってしまった彼を睨んだ。
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作者名:らしろ | 作成日時:2020年8月10日 1時