第六十三話「魔人探し」 ページ14
一悶着あり、結局は背中合わせでベットで二人寝ることに合意した。
「ねえ、A」
『んー?』
「本当に欲しいものは無いの?」
太宰の問いに私は言葉に詰まる。
自分の欲しいものなど何一つない。
本当に何一つ────
「何でもいいんだよ?購うのは森さんだし」
『森さんに申し訳ないかな!?』
「いいんだよ、日頃頑張ってるからその分、なにか貰わなきゃ」
そんなこと云われても迷う。
でも何も云わなかったら別荘とか購いそうで怖いな。
『……ギリギリまで考えとく』
「そうやって先延ばしにして……あと一週間後だよ?」
『当日までには考えとくから。プレゼントはその日に購いに行こう』
「購い物デェトねぇ。ふふ、判った」
否、購い物デェトなんて一言も云ってないんだけど……
まぁそれで彼が納得出来たならそれでいいか。
『じゃあ、おやすみ』
「うん、おやすみ」
ゆっくりと目を瞑る。
疲れていたのか、意外とすんなり寝てしまった。
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『……予想はしてたけども』
朝、と云っても正午前。
私は溜息を吐きながら腰に巻かれている腕を剥ぎ取ろうとするがなかなか取れない。
『……起きてるでしょ』
「たまにはいいでしょ」
『もう起きるから離して』
「厭だ」
ギュッと腕の力を強めやがった包帯野郎。
今の状態はバックハグ。
マジで恥ずかしいからやめて欲しい。
『……購い物デェトしないよ』
「……判ったよ」
背中の温もりが消えた。
やっと自由になれた体を起こす。
「おはよう、A」
『おはよう、太宰さん』
太宰と挨拶をしてカーテンを開ける。
非常に天気の良い日。
眩しい太陽を見て私は決意する。
……今日、魔人に逢おう。
そう思ったって逢えるか判らないが。
「今日も善い自 殺日和だね。僕と一緒に出掛けない?」
『結構です、今日は街を散策すると決めてるから』
「だったら一緒に行こう」
『今日は一人の気分なの。また今度ね〜』
太宰の言葉を軽く流して洗面所に向かう。
悟られぬよう、魔人探しをしなくてはならない。
『……はぁ』
小さく溜息を吐いて顔を洗った。
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作者名:らしろ | 作成日時:2020年8月10日 1時