第六十二話【約束を破らない】 ページ16
太宰君は目を見開いた｡
森医師は笑っていた｡
『有り得ないよ』
私は強い口調で森医師を見る｡
鋭い眼差しで彼を睨む｡
『太宰君が貴方に云うはずがない』
｢根拠はあるのかね｣
『太宰君は約束を破らない』
すると今度は森医師が目を丸くする｡
そして次第にくつくつと笑い出す｡
｢首領､巫山戯ないでください｣
｢済まない､そんなに怒らないで太宰君｡少し試しただけだよ｣
『試すって何？そんなんだからエリスに好かれないんだよ変態』
｢ぐっ……｣
胸を抑えて蹲るが顔は嬉しそうに笑っている｡
本当の本当に変態だ｡
『大丈夫､喩え私が政府へ行っても手は打つつもり｡
あの人達の云いなりにはならない』
｢どんな手を用意するんだい？｣
『森医師に教えるわけないでしょ』
｢私も知りたいなぁA｣
『太宰君が云うのであれば仕方ない！』
｢……すごい差だね｣
森医師は苦笑いしながら頬を掻く｡
私はニンマリ笑って変な茸のキーホルダーを中原君の帽子に付ける｡
『条件だよ』
｢条件？｣
『私が政府に行く代わりに探偵社にもっと優遇措置を設けろって云うつもり』
｢探偵社だけでなくてポートマフィアもそこに加えて欲しいなぁ〜｣
『黙って変態』
そんなぁと落ち込む森医師｡
政府に向かって反社会組織に優遇措置をしろって云えるわけないでしょ！
『……まぁそれを政府が呑んでくれる確証はないけど』
しかし私にとっては探偵社が宝箱で何より大事な仲間がいる場所｡
そんな彼らに危害を加えようなら私は容赦なく政府を潰す気でいる｡
『政府の事情など心底どうでもいい｡
この街と探偵社､そして仲間､家族が居れば私はもう何もいらない』
パキンッと氷の結晶を作って中原君の帽子に飾ってあげる｡
めちゃくちゃな帽子となったがこれはこれで可愛い｡
｢……そうかい｣
森医師は諦めたように笑って静かになる｡
いつもならここでもっと執拗く云い寄ってくるのに｡
｢……中也君､例の場所に｣
｢承知しました｣
『何処行くの？』
｢却説､何処だと思う？｣
『何処にいくの太宰君』
森医師の言葉は無視して太宰君を見上げる｡
彼は微笑んで私の頭を撫でた｡
｢ふふっ……｣
数十分後､着いた場所は洋服屋｡
煌びやかなドレスが多数並んでおり私の足は竦んだ｡
｢行こうか､A｣
太宰君の素敵な笑みに私の頬は引き攣った｡
.
第六十三話【ドレスより着物】→←第六十一話【デコレーション】
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らしろ(プロフ) - よ だ かさん» コメントありがとうございます。更新楽しみにして下さりありがとうございます！これからも頑張ります。 (2020年5月31日 13時) (
レス) id: 2b7c5de986 (このIDを非表示/違反報告)
よ だ か(プロフ) - 続編おめでとうございます!! これからも更新を楽しみに待ってます！ (2020年5月31日 13時) (レス) id: c6fcdfc168 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：らしろ | 作成日時：2020年5月31日 11時
