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第××話『台本通リノ世界ヲ“弐” 』 ページ49

「……厄介ですね」



「……それは十分承知だ。しかし貴様は僕を殺すことができんだろう」




フョードルの瞳をじっと見ながら自信満々に云う。
初めは子鹿のように震えていた芥川だが、何かが変わった




「だからぼくは、貴女の体に異能を植え付けた」



「ああ、流石の僕も貴様に拍手を送りたい程だ。しかし……」




更に口角が上がる芥川にフョードルは珍しく恐怖を覚えた。
彼女の放つオーラ、言葉、そして表情に何故か引き込まれそうになる。




「……僕は貴様の手駒にはならない」



「……そうですか」




残念そうに呟くフョードルだが、どこが判っていたように溜息を吐く。




「それで?ぼくの質問には答えないつもりですか」



「……目的の事か?」




目を逸らして口を閉ざす芥川にフョードルは注意深く彼女を見る。
少しの動作も見逃してはいけない。
……芥川は太宰より危険人物なのだから。




「……目的は唯の償いだ」



「……償い?」



「……詳しくは云えぬが、貴様と大して変わらぬ」




この街の、大切な人達のことを考えているようでどこかほんの少しだけ、自分の傲慢な望みも含まれている。




「……人間は罪深くて愚かだ。だからいいんじゃないか。そうだろう?」



「……彼と同じですね」



「……真似しただけだ。この世に同じモノなど……何一つないのだから。だから自分も……彼には……」




笑みを浮かべていた芥川の表情が曇る
フョードルは彼女から離れる




「最後に一つだけ」



「……何だ?まだ何かあるのか」



「本当の“悪”とは一体、誰の事だと思いますか」




最後で変な質問をしてきた
芥川はお前だろ、みたいな顔をしてフョードルを睨む。




「……ぼくが思うに、本当の悪は────」




フョードルは片膝を地面について彼女に向かって頭を垂れる




「……貴女の事だと思います、女神様?」




何も云わない彼女にフョードルは紫色の目を細めて笑う




「貴女からしてみればここに居るぼくも、この街にいる者も世界も全て愚かでしょう。


貴女は本当にこの街を護りたいのでは無い筈です。」




芥川の手が自分の耳をゆっくりと押さえる
しかしフョードルは構わず続ける




「この街を……愚かで醜い台本(シナリオ)通りの世界を壊したいのでしょう?」




その言葉に彼女は今までに見せたことのない表情で笑ったのだった




……本当の幸福とは誰にとっての不幸なのか




.

続編のお知らせ→←第××話『台本通リノ世界ヲ“壱” 』



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らしろ(プロフ) - 乳酸菌 チーズさん» コメントありがとうございます。やっと続編に続きます。明日には5を公開できると思いますのでお待ちください!ご愛読ありがとうございます。 (2020年3月15日 13時) (レス) id: 2b7c5de986 (このIDを非表示/違反報告)
乳酸菌 チーズ(プロフ) - 頑張ってください〜待ってますのでー! (2020年3月15日 3時) (レス) id: df6c59ac1d (このIDを非表示/違反報告)
らしろ(プロフ) - ぴのさん» コメントありがとうございます。時間に余裕ができれば黒の時代もやりたいなと思っています。ご愛読ありがとうございます! (2019年7月1日 22時) (レス) id: 2b7c5de986 (このIDを非表示/違反報告)
ぴの(プロフ) - いつか黒の時代も見たいです…… (2019年6月30日 22時) (レス) id: 5f84d6c253 (このIDを非表示/違反報告)
らしろ(プロフ) - りんさん» コメントありがとうございます。楽しみにしてくださると嬉しいです。頑張ります! (2019年6月22日 22時) (レス) id: 2b7c5de986 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:らしろ | 作成日時:2019年6月22日 17時

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