第百五十八話『ギムレット』 ページ47
本部を出ると太宰が待ち伏せしており、芥川は半強制的に彼と共にBARルパンへ行く事になった。
『……久し振りに来ました』
太「……そうだろう?なに飲む?」
『……オレンジジュ』
太「マスター、ジントニックを二つ」
『……えっ』
二つってもしや自分の分もか!?
冷たい視線を太宰に向けると彼は満足気に微笑む。
太「大人の話をしようじゃないか」
『……大人の話、ですか』
あまり乗り気ではない芥川にまぁまぁと云いながら太宰は白い分厚い封筒を彼女の目の前に差し出す。
『……これは?』
太「……切り札さ。君に渡しておくよ」
『……中身は?』
太「……内緒。その時が来るまで開けてはいけないよ?」
その時とは一体どの時なのだろうか?
切り札を遣わざるを得ない状況だなんてなりたくもない。
太宰と芥川の前に酒の入ったグラスが置かれた。
太「乾杯しようじゃないか」
『……今日だけですよ』
互いにグラスを持ちあげる。
カランっと氷が音を鳴らす。
太「……
────カンッ、と初めて太宰とグラスを鳴らす。
いつも飲みの席ではオレンジジュースか烏龍茶などアルコールでは無いものを飲んでいた。
因みに、実を云うと中也と飲みに行った時でも芥川はアルコールを飲んだことはない。
『……美味しい』
太「だろう?」
『僕はこの一杯で終わりますね』
太「何を云ってるの?最低五杯は飲まないと」
『五……?』
あまりお酒を飲まない人に五杯はキツイと思う。
芥川が一杯目を飲み終えた時、次のお酒が目の前に置かれた。
『……ペースが早い』
太「ほら、これで最後にしてあげるから」
『……これは?』
カクテルグラスをまじまじと見て太宰に問う。
彼は自分のグラスを持ち上げて一口飲む。
太「……これは度数が高めでね。お酒の弱い君はすぐに酔ってしまうかもね」
『……飲みたくないのですが』
太「……是非、飲んでくれ給え。大切な意味のこもったお酒なのだから」
慥かに意味のあるカクテルがあると聞いたことがあるが───
『……このお酒は?』
太「……大好きだよ。Aちゃん」
『……はぐらかすな』
太宰は妖艶に微笑み
太「────ギムレット」
そう呟いて芥川の額にキスした。
……To be continued.
ギムレット……遠い人を想う・長い別れ
第××話『台本通リノ世界ヲ“壱” 』→←第百五十七話『成長シテイルトハ』
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らしろ(プロフ) - 乳酸菌 チーズさん» コメントありがとうございます。やっと続編に続きます。明日には5を公開できると思いますのでお待ちください!ご愛読ありがとうございます。 (2020年3月15日 13時) (レス) id: 2b7c5de986 (このIDを非表示/違反報告)
乳酸菌 チーズ(プロフ) - 頑張ってください〜待ってますのでー! (2020年3月15日 3時) (レス) id: df6c59ac1d (このIDを非表示/違反報告)
らしろ(プロフ) - ぴのさん» コメントありがとうございます。時間に余裕ができれば黒の時代もやりたいなと思っています。ご愛読ありがとうございます! (2019年7月1日 22時) (レス) id: 2b7c5de986 (このIDを非表示/違反報告)
ぴの(プロフ) - いつか黒の時代も見たいです…… (2019年6月30日 22時) (レス) id: 5f84d6c253 (このIDを非表示/違反報告)
らしろ(プロフ) - りんさん» コメントありがとうございます。楽しみにしてくださると嬉しいです。頑張ります! (2019年6月22日 22時) (レス) id: 2b7c5de986 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:らしろ | 作成日時:2019年6月22日 17時