漆黒の狗は原作を知らない為困っているそうです3【文スト】【芥川成り代わり】

第八十六話『紛レモナイ事実』 ページ6

『辛いな､大切な人が居なくなるのは』



敦｢大切､なんか……っ､なんだよいきなり｡同情……なんてッ､いらない！｣



『ふはっ､何処かで聞いた言葉だな｡ならあの時のお前の言葉をそっくりそのまま返してやる』




両手で敦の頬を挟んで顔を上げさせる
彼の綺麗な紫と黄色の瞳が霞んでいる




『同情なんかじゃない｡僕はただお前を心配しているだけだ』



敦｢……っ！｣



『お前の気持は判る｡僕も大切な人を亡くした､それも沢山……』




貧民街の仲間､小さい子ども達､その世話をしていたオジサンと……天然な彼奴




『僕だって泣いた｡涙が枯れるまで､声が出なくなるまで』



敦｢……おま､え……が……？｣



『人の命を奪う仕事をする人間が泣くのは可笑しいが……
だがそれ程悲しかった』




だから……そう､だからこそ




『泣けばいい｡泣いた後は進め｡前を見ろ｡


過去を振り返るのはいい


だが､縛られるな


お前が過ごしたあの日々は地獄だったかもしれない｡


でもその地獄がなければ､そんな過去がなければ……


お前は此処に居なかった｡それは紛れもない事実だ』




敦の目が大きく見開かれる
その拍子にボロボロと涙が零れ落ちた




『その人は､お前が人一倍幸せになることを誰よりも強く望んでいる……絶対に』




そう云い､ゆっくりと敦の顔を離して立ち上がる
心地の好い風が吹いた




『じゃあな』




歩き出して数秒後､声を押し殺して泣いている彼の鼻を啜る音が聞こえた









『盗み聞きとは最低ですね』



太｢いい事を云ったじゃないか｡君も頑張ったね｣




ポケットに入っていた小型の盗聴器を太宰に投げて視線を逸らす




『……悲しみを乗りこえたからこそ云えるものです』



太｢……そうだね｣



『貴方は乗り越えられましたか？彼の人の死を──』




敢えて返事は聞かずに立ち去る
何故だか太宰の顔が見れなかった




『……にしてもあれで良かったのか？』




原作でも芥川があそこまで敦とか関わっていたのだろうか？
確かに彼と共闘をしなくてはならないが､此処まで仲良くなるものなのだろうか？




『うぅむ､矢張り拙いな｡さっぱり判らん……あれ？』




宛もなく歩き､何時の間にか商店街の方まで来ていた




『……樋口たちに茶菓子でも買っていくか』




丁度近くにあった店に寄って数個のケェキを購う


そして店を出た時､電柱に寄り掛かり泣いている少女を見つけた


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