第二百三話『出発進行』 ページ46
『……いえ、大丈夫です』
「そうかい?けれどそのチビゴリラを抱えて車まで行くのは
大変だろう?」
『……自分はこれでも鍛えていますので、平気です』
敢えて声のする方を向かずに自分の財布から代金を出す。
駄目、今振り返ったらいけない。
……きっと泣いてしまう。
『……それでは失礼します』
代金を握りしめて中原の片腕を自分の肩にまわす。
ふらりと立って会計へ向かう。
『……意外と重い』
のろのろと会計を済まして店を出る。
(中原の)車の鍵を開けて後部座席に彼を放り投げる。
それでも彼はまだ起きない。
『……はぁ、何度この高級車を運転すればいいんだ』
これで三十回くらい目だぞ。
たまに広津さんが中原を送ってくれるが殆どが芥川だ。
『……却説、行くか』
「出発進行〜」
『うぎゃゃゃゃああああああああ!!!??』
運転席に座った途端、助手席に変な奴が乗っていた。
いつの間に?というか何故!?
『……なっ、何で貴方が
────太宰さん』
彼は微笑んで人差し指を自分の唇に当てる。
太「静かに。蛞蝓が起きるだろう」
『……い、いや……それより何故……貴方が……』
ほらほら早く行くよ〜、と呑気に云う太宰にふと懐かしいなと
思いつつエンジンをかける。
『……中原さんを家まで送りますが』
太「……本当はこんな奴、置いて行ってもいいのだけど」
『……駄目です』
車を走らせて彼の自宅へと向かう。
気まずい時間が過ぎる。
けれど幸い、中原の家は居酒屋からそう遠くない所だ。
『中原さん、中原さん!起きてください!』
中「……んっ……んん〜」
『……おい起きろ、チビ』
中「……誰がチビだァ!あくたなわ!」
『……芥川です』
太「……ぶふっ」
毎回、車の中で熟睡する中原をこうして起こしている。
少し悪口を云ったら反論して少し起きてくれるのだ。
『……ほら家に着きました。ちゃんと帰ってくださいね』
中「お〜よ〜、またなァ、あくたなわぁ」
『……芥川です』
フラフラの足取りでマンションのエントランスに入っていく
中原を見送る。
本当に自分の部屋に辿り着けるか不安だが、これでも毎回
何も問題がなく家に帰っているらしい。
太「これから予定もないし……ホテル行く?」
『……行かぬ』
太宰の手を払い除けて夜道を歩く。
その隣を太宰は歩いた。
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アニヲタ(プロフ) - 少し遅くなりましたが最近(?)20巻発売されましたね!私はもう…ショックが酷くて読んだ後一週間位病んでました笑更新再開ずっと気長に待ってます!無理の無いご自分のペースで書いてくださいね…!ずっとずっと待ってます! (2021年1月11日 22時) (レス) id: 71f36505fa (このIDを非表示/違反報告)
らしろ(プロフ) - アニヲタさん» いえいえ、リクがありましたら可能な限り受け付けます。お時間が掛かるかもしれませんが、、、でっぷるは映画で一度見たきりなのであまり詳しく覚えてないです、、小説は友人に貸して帰ってこないんですよ笑 (2020年7月30日 3時) (レス) id: 2b7c5de986 (このIDを非表示/違反報告)
アニヲタ(プロフ) - 厭々!!!リク受けて下さるだけでも十分過ぎるのにぃ…マジで有難う御座います…!実は私もでっぷる編全く、これっぽちも知らんのですよねぇ...。 (2020年7月28日 18時) (レス) id: a9a289fd68 (このIDを非表示/違反報告)
らしろ(プロフ) - アニヲタさん» コメントありがとうございます。でっぷる編ですが今、手元に小説がない状況でして書くことが出来ないんです、申し訳ないです、、、リク希望ありがとうございます。時間が掛かるかもしれませんが、受付致します。 (2020年7月28日 18時) (レス) id: 2b7c5de986 (このIDを非表示/違反報告)
アニヲタ(プロフ) - あのぅ…でっぷる編書くご予定はありますでしょうか…?若し無ければリクをしたいのですが… (2020年7月28日 14時) (レス) id: a9a289fd68 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:らしろ | 作成日時:2020年3月16日 21時