漆黒の狗は原作と違う為困っているそうです2【文スト】【芥川成り代わり】 (ページ40)

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第八十話『墓参リ』ページ40

早朝
花束を手に墓場の前に立っている女が一人

『……久し振りだな｡遅くなってすまぬ』

しゃがんで花束を置き､手を合わせる
線香の香りが鼻を擽る

『……聞け｡またあの包帯木乃伊の所為で僕の使命が一つ果たされた｡まあ､いい事だが』

目を細めてこの四年､話せなかったことを少しずつ呟く

太宰がマフィアから抜けた後日や幹部に昇格した時の話
中原とよく飲みに行く話や姐さん､森､エリス嬢､黒蜥蜴､樋口のこと等々

『あっという間の四年だった』

話していたらキリがない
とても毎日が色濃くて楽しかった

『……まあ､お前も見ていただろうが｡
この間の組合戦も凄かっただろ？ハラハラしたが無事終わってホッとしている』

一体何処から見ていたんだろうな？空からかな？
ぽけぇと空を眺めていると背後から誰かが歩いてくる音が聞こえた

『(見付かっては拙いな)じゃあまた来る……織田作』

墓石に向かって呟いて後ろを振り向く
すると目の前には砂色の外套に手を突っ込んだ太宰が立っていた

『ああ､貴方ですか』

太｢ええ～なんか冷たい～｣

『僕は終わったのでそれでは』

こんな朝早くに此奴が起きているなんて珍しい
歩きだそうとすると｢ねえ｣と呼び止められた

太｢君はどこまで知ってるの？｣

『……』

太｢君もここ迄の事は予想できていた｡ならこの先のことはどうなんだい？｣

ピタリと立ち止まり太宰を見る
綺麗な鷲色の瞳が彼女を捉える

『この先の未来なんて誰も判るはずがありませんよ
……それでは､僕は仕事がありますので』

薄く微笑んで歩き出す
風に乗って白い外套がバサッと靡いた

太｢機密情報……か｣

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『首領､裏切り者は片付けました……ええ､大丈夫です｡では』

ピッと通話を切って頬についた血を拭う
全く､組合編の後に裏切り者が出るとは……

『早く帰って腹拵えをするか』

倒れている奴等は掃除屋に任せて路地裏を歩く

──ふと､背後に人の気配がし羅生門を瞬時に伸ばす

『……誰だ』

距離を取り､羅生門に胴体を巻き付かれた相手を睨む

白い変わった帽子､黒いマント､細い体つきの……男か？
前髪が影になり表情は読み取れない

？｢相変わらず警戒心が強い狗ですね｣

『……誰だと聞いている』

ゆっくりと顔を上げる男
霞んだ紫色の瞳と目が合った

？｢久し振りです……Aさん｣

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