第五十七話『甘エルナ、愚者メ』 ページ17
『あっ、あの……太宰さん?』
太「何を云われた」
『……え』
太「森さんに何を云われた」
太宰の声が低くなる
芥川の背筋に冷たいものが伝う
『な、何で首領が出てくるんですか』
太「いいから答えて。何故さっきから挙動不審なんだい?あの鈍い中也でさえ君の異様に気付いている」
さり気無く中也を貶し芥川の顔を覗き込む
よくもまあ、彼女の些細な変化も見逃さない、凄い人だ
『僕は、貴方の……狗。貴方が僕に……何か指示すれば僕は必ず遂行する。喩え、首領の暗殺でも』
太宰は「成程ね」と納得し、面倒臭そうに溜息を吐いた
太「つまりあれかい?
“自分は誰かに何かを云われないと行動することの出来ない駄目な狗です”
と云いたいの?」
『……うっ、あの』
太「莫迦なの君は。それに私は犬は嫌いだし、それに君はね……」
『……あ、あの太宰さん。はっ、早く行きましょう?』
太「話はまだ終わってないのだけど」
長くなりそうだから遮ったのにゆっくりと近付いてくる太宰
芥川は苦い顔をしながら後ろに下がる
太「追い討ちをかけるようだけど云う。君、狙われてるよ」
『……知ってます』
太「もし君が敵に囚われた時……自分を守れるのは自分しかいない。私の言葉は届かないのだよ」
『……判ってます』
太「なら、誰かに何を云われる前に自分で考え行動するべきだ」
芥川の真っ黒い瞳が揺らぐ
そのくらい判ってる。判っているけれど自分じゃあもう……何も術がない
────甘えるな、愚者め。
ゴンッと鈍器を殴られたように芥川の何かが崩れた
何だ今の声は何なんだ?私が愚者だと……一体誰の声なんだ
『……僕は愚者?そんな事、ない』
────ならその程度の覚悟だったのか。
『黙れ……』
咄嗟に耳を塞ぐ。しかし声は脳に直接響いてきて意味が無い
太「Aちゃん?どう」
『貴様に何が判る!?孤独とドス黒い闇の中で必死に這い上がってきた私の何が!何が判ると云うんだ!?』
太「……」
『本当はこんな処に居たくなかった!貧弱の代わりなどやりたくなかった!それなのに荷が重すぎる使命を課せられて……
───私は……この世界は……私を、一体如何したいの?』
彼女の頬に涙が伝う
拭っても流れるそれは、なかなか止まらない
太「全く……だから溜め込み過ぎるなと云ったのに」
太宰は愛おしそうに彼女を抱き締めた
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らしろ(プロフ) - シアトルさん» 優しいと思えば、意外と裏切られる芥川ちゃんでした(笑) (2018年9月7日 17時) (レス) id: 8b3e2d1361 (このIDを非表示/違反報告)
シアトル(プロフ) - 太宰さんは相変わらずクソであった…でめたし、でめたし…? (2018年9月7日 0時) (レス) id: 93e9cd7354 (このIDを非表示/違反報告)
らしろ(プロフ) - 埴輪型竹輪さん» そのまさか……かも?しれないです(笑)ご期待ください! (2018年9月3日 23時) (レス) id: 8b3e2d1361 (このIDを非表示/違反報告)
埴輪型竹輪(プロフ) - え......まさかあの方と関係が...! (2018年9月3日 22時) (レス) id: 4f1c00f9fa (このIDを非表示/違反報告)
らしろ(プロフ) - 鈴さん» まさか……!です(笑)、次にご期待ください! (2018年9月3日 21時) (レス) id: 8b3e2d1361 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:らしろ | 作成日時:2018年7月3日 21時