第六話【天使と女神】 ページ7
『……ごめん、こんなこと云う私は酷い人かも。でもね、今の晶ちゃんは無理してるように見えたから』
「そう見えるかい?只まだ疲れてるだけだと思う」
『晶ちゃん』
そっと晶ちゃんの頭を撫でる
いつもお父さんが私の頭を撫でてくれるように
『忘れちゃ駄目だよ』
「……!」
『喩え、辛く悲惨な過去でも忘れたくない事、忘れたくない人……いるんじゃないの?』
唇を噛み、何かに耐えているような表情の晶ちゃんの手を握ってゆっくりと言葉を紡ぐ
『なら尚更忘れちゃ駄目だよ。晶ちゃんが忘れちゃったら本当に“無かったこと”になるんだからね。そんなの寂しいもん』
「……A」
『私も……晶ちゃんとは違う形だけど、一度だけ“無かったこと”にされたことがあるから。忘れられた悲しみは判るんだ』
檻にいた私のお世話をしてくれていた秘書の人は私のことを悪者にし、上へとのし上がっていき、私は存在さえ無視された……
それともう一つ……
『だから晶ちゃん、その人たちの為にも』
「A……っ」
『のあ!?』
ギュッと抱き締められて驚いていると、晶ちゃんは涙ぐんでいて。やっぱり苦しかったんだと私は優しく背中を摩った
「……A、アンタは妾の神様だよ。天使とか……そんな小さいもんじゃない」
『……そんなことない。私は凡てを理解しているわけじゃないんだよ。ただ、私は晶ちゃんを救いたいだけ』
「その気持ちが嬉しいのさ。ありがとう、A」
静かに涙を流しながら私を抱き締める晶ちゃん腕は強くて。でも少し震えていた
『大丈夫、私も乱歩君も福沢さんもいるから。いっぱい我儘云っていいんだよ』
「……ふふ、まるでAはお姉ちゃんみたいだねぇ」
『えー!お姉ちゃんは晶ちゃんだよ!』
「年齢的にはね。でも思考や雰囲気が大人っぽいンだよ」
そうなのかなぁと首を傾げていると医務室の扉が勢いよく開く
「お待ちかね!食後のデザァト、ケェキだよ!」
『デザァト!ケェキ食べたい!』
「違うよ!Aじゃなくて、その子に持ってきたの!」
『乱歩君のケチ!阿呆!それでも君は名探偵なの?優しくないっ!』
「こらこら喧嘩しないの。全く……世話の焼ける家族だねえ」
『晶ちゃん!一口頂戴!』
「僕も!一口食べたい!」
はいはい、と呆れながらも嬉しそうな晶ちゃんを見て心が温かくなった
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らしろ(プロフ) - 有栖川.さん» コメントありがとうございます。可愛いと言っていただけて嬉しいです!更新頑張ります、引き続きお楽しみ下さい! (2020年5月26日 21時) (レス) id: 2b7c5de986 (このIDを非表示/違反報告)
有栖川.(プロフ) - 織田作、、可愛い…。更新頑張ってください!! (2020年5月26日 19時) (レス) id: 365395094b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:らしろ | 作成日時:2019年6月21日 18時