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第十八話【嫉妬】 ページ19

『……っ、何処にいるの!』




よく行く駄菓子屋

皆で行った甘味処

人が多く行き交う商店街



どの場所に行っても彼の姿は見当たらない。
携帯で電話しようにも出てくれない。




『……乱歩君』




走って走って────時刻は正午近く。


朝食を食べずに駆け回った所為か
フラフラの足取りでベンチに座る




『……こんな、空腹如きで私は』




数年前までは空腹でも怪我をしても、血塗れになっても
身体を動かし続ける事が出来た。


体が訛っている証拠だ。




『……っ』




自分が不甲斐なさ過ぎて唇を噛む




「お困りかい?」




不意に声が後ろから聞こえて振り返る。
そこには包帯だらけの少年が立っていた。




『……太宰……君』



「どうしたんだい、そんなに泣きそうな顔をして。
お腹でも空いたのかい?」




そう云いながら右腕を上げる。
その手には私の大好きな和菓子のお店の紙袋。




『……お腹……空いた』



「たまたま購ってきたんだ。一緒に食べよう」




太宰君が袋から出したのは私が大好きなわらび餅。
目を輝かせた私に彼はニコリと笑って隣に座った。




『……ありがとう』



「君の為ならばこんなのお易い御用さ」




爪楊枝でわらび餅を一口食べる。
うん、相変わらず美味しい……




「少しは落ち着いたかい」



『……うん。太宰君は優しいね』



「君くらいだよ、そんな事を云うの」




もう一口食べる。

暖かい風が頬を撫でた。




「誰か探していたのかい」



『そうなの。謝りたくてずっと探してて。
でも見つからなくて。なんだか自分が……腑甲斐無くて』




じわりと視界が歪む。

泣いちゃ駄目だ、悪いのは自分なのだから。




「……申し訳ないけど、なんか嫉妬しちゃうなぁ」



『……えっ?嫉妬って、むっ!』




わらび餅を口に無理やり入れられて驚いて太宰君を見る。


彼は澱んだ瞳を細ませてゆっくりと顔を近付ける。




「君をそんな顔にさせる彼に、ね?」




鼻と鼻が触れる。




『……だ、だざ』



「……」




唇が触れそうになり思わず目を瞑る。




「……離れろ!!」



「おわっ」




聞いたことのある声とドサッという音と共に影が消えた。
目を開けてみると探し求めていた人物が目の前に。




『乱歩君!!』



「君さぁ!うちの妹に何しようとしてるの!?」



「あいたた。……と云いながらAから逃げ回ってた癖に」




彼らは互いに睨み合っていた。


.

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らしろ(プロフ) - 有栖川.さん» コメントありがとうございます。可愛いと言っていただけて嬉しいです!更新頑張ります、引き続きお楽しみ下さい! (2020年5月26日 21時) (レス) id: 2b7c5de986 (このIDを非表示/違反報告)
有栖川.(プロフ) - 織田作、、可愛い…。更新頑張ってください!! (2020年5月26日 19時) (レス) id: 365395094b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:らしろ | 作成日時:2019年6月21日 18時

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