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***
「…っ。」
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鼻の先に息がかかり、その距離に私の緊張が
ピークに達する。
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断る理由なんて、もうそこにはなかった。
精一杯の勇気を込めて涼介を見つめ返し、
私はそっと口を開く。
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「いいよ……んっ…!」
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今度は言い終える前に強引に唇を合わせてきた。
涼介の長い睫毛がすぐ近くにあって、私は咄嗟に目を瞑って、
存分に私の口内を堪能されて。
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涼介「好き…」
「んっ、うん…」
涼介「Aは?」
「好き、だよ…」
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唇が触れて、離れて。
何度も擦り合わせ、舌先を差し出し、押し当てあい、
ひそひそと囁きあう。
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恥ずかしいのに、心地良くて
コツンと額が当たって、二人で笑って。
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私ね、ずっと考えていた。
毒林檎を食べたお姫様は王子様のキスで目覚め
て
最後は幸せになる。
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だけど、毒林檎をつくった魔女は罪を犯し、罰を受けた後は
どうなるのかなって。
“毒林檎”はどうやってつくられているのかなって。
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だけど、“毒林檎”なんて悪い魔女だけが
つくれるものじゃなかった。
”それ”は、人から生まれるもので、
“それ”は、人が勝手に作りだす幻。
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傲慢、嫉妬、憤怒、怠惰、強欲、色欲、暴食といったような
七つの大罪を具体化したもの。
つまり、欲に満たされないものの集まり。
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誰にだって簡単に毒林檎をつくることができる。
それも無意識に。
だけど…
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「りょうすけ…」
.
肩に顔を埋め、静かに囁くと
頭上から甘い声が返ってくる。
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涼介「ん?」
「ありがとう…」
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何があっても傍にいてくれた人…
嬉しそうに笑う涼介を見ていたら、
それだけで私は満たされる。
.
「これからも、よろしくおねがいします…」
涼介「ふふ…うん。こちらこそ。」
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今まで本当に色んなことがあり過ぎたけど、
“毒林檎のつくりかた”を知ったから、もう何も怖くない…
この幸せの余韻に、私はそっと目を閉じた。
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愛(プロフ) - おはようございます♪何回見ても泣けるお話です(泣)続編見たいです★楽しみにしてます(•‿•) (6月17日 7時) (レス) @page49 id: 170da3309e (このIDを非表示/違反報告)
まりも(プロフ) - ぱんださん» お返事遅くなりすぎて申し訳ございません…!何度も読み返してくださりありがとうございます。作った者としてこれ以上無い褒め言葉です。マイペース更新になりますがよろしくお願いいたします。 (5月27日 22時) (レス) id: 9a2317564f (このIDを非表示/違反報告)
ぱんだ(プロフ) - 私はこの作品のファンとして毎度更新を楽しみにしていました。終盤は涙が止まらなくなることも多く、気づけばこの作品にのめり込み、何度も読み返しています。そして何度読んでも毎度号泣しています。今作も楽しく拝読しています。これからも陰ながら応援しています。 (2023年2月5日 7時) (レス) id: 399b55da19 (このIDを非表示/違反報告)
まりも(プロフ) - るん。さん» 嬉しいコメントありがとうございます!楽しんでいただけて嬉しいです。ちょうど今新作公開したので、お時間あればお越しください。 (2022年12月31日 18時) (レス) id: 9a2317564f (このIDを非表示/違反報告)
るん。 - 本当に本当に本当にお疲れ様でした。最初から最後までとても楽しく読ませて頂きました。小説の本を読んでるかのように読みやすく感情移入しやすかったです。1番好きな小説です!また新作できた際には拝見させていただきます! (2022年12月18日 11時) (レス) @page49 id: fde368863d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まりも | 作成日時:2022年10月8日 0時