25 ページ25
．
歓迎会が終わった後、暫く胃を休めたAは、万次郎に連れられて家を出た。
玄関を出てすぐのところには、丁寧に整備されていることが伺える一台の
本物のバイクを近くで見たのは万次郎を追いかけて武蔵神社に行った時以来。しかもあの時は目の前の背中を追うことに必死で、バイクなど見る暇がなかった。
目新しいものを見る気持ちでAが側面にペイントされた『卍』の模様をじっと見つめていると、やがて自分が首にはめているものより小さめのヘルメットを持った万次郎が戻ってくる。
それはAをバイクに乗せるため、万次郎が自分のお小遣いを
「それ被って、オレといっぱい色んなとこ行こうな」
約束だ、と言いながら、Aの小さな頭にヘルメットを乗せ、顎紐をカチリッと止める万次郎。
ヘルメットの上から撫でられてもその感触を直に感じることは出来ないが、少しだけ、その暖かい掌を感じることができるような気がした。
まだ掴まる力が弱いAは、ハンドルと万次郎の間に座らされた。
そして特徴的な排気音と共に風を切り始める
……いつか大切な誰かを乗せて走ってみたいと思っていた。
「振り落とされんなよ、A！」
「っ！」
バブと一緒に進路方向へと体を傾け、一気に角を曲がり切る。
自転車や車とはまた違う爽快感。外の世界にすらあまり触れてこなかったAにしてみれば、初めてのバイクはテーマパークにあるアトラクションのような楽しさがあった。最も、テーマパークなどというキラキラした場所に行ったことなどないが。
声など無くてもAが楽しんでいることを感じ取り、万次郎も分かりやすく微笑む。
目的地までさほど距離は無かった。
ものの十分ほどで二人はそこにたどり着く。いつもの数倍気を遣ってスピードを落とし、敷地のすぐ横でバイクを降りる。
ヘルメットを外してもらって視界の開けたAが真っ先に見つけたのは、ピカピカに磨かれた
「Aにはまだ紹介してなかったから」
万次郎に手を引かれて歩くAの前に、花の生けられた一つの墓石が現れる。
その墓石には達筆な文字で『佐野家之墓』と刻まれていた。
不思議なものを見る目で隣を見上げたAを、万次郎は寂しげな笑顔で見つめた。
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2702人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「東京リベンジャーズ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
レモン - サイコーすぎんだろ‼️ 応援してます😆 (2022年7月2日 13時) (
レス) @page50 id: 97f09e59d6 (このIDを非表示/違反報告)
無塩バター(プロフ) - ぺたごんさん» ありがとうございます！今日中に続編に移行するつもりなので、続編もよろしくお願いします！ (2021年11月13日 8時) (レス) id: aad7259adc (このIDを非表示/違反報告)
ぺたごん - すごくすき愛した だぁじに悶えてます 続編待ってます！ (2021年11月13日 1時) (レス) @page50 id: 660f048392 (このIDを非表示/違反報告)
無塩バター(プロフ) - ただのバカですさん» そうです三ツ谷くんです（笑）多分本文でも書くと思うんですけど、みつや→みつゃ→みちゃ 的な流れから、みちゃになりました。続きものんびり頑張ります！ (2021年10月23日 0時) (レス) id: aad7259adc (このIDを非表示/違反報告)
ただのバカです - みちゃ？あっ、三ツ谷くんの事ね。え！？可愛くねぇ？みちゃだよ？胸取れるわ。ムフフ続き楽しみに待ってます。 (2021年10月21日 7時) (レス) @page45 id: acf5fa610c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
