18 ページ18
．
＿＿＿＿＿＿今頃場地と仲良く遊んでいるあろうAを迎えに行っていた万次郎は、ひどく機嫌が良かった。
それもその筈。話し合いの結果、エマと祖父がAのことを認めてくれたからだ。
明日正式に歓迎会をしよう、と言うエマの目はキラキラと輝いていて、すっかりAの存在を受け入れていた。最近なんかは自分からAとの接点を作りにいくほどで、けれど最初にとった態度から、あまり上手く距離を詰めれないでいた。
明日になれば正式に家族になるのだから、そんな遠慮も必要なくなる。
その興奮を表に出さないようにしていた為に、いざAを前にすると少しぎこちなくなってしまった。
呼び名も変えるべきだろうか、とか色々考えているうちにAと万次郎が帰宅してきたときは、それはそれは焦ったものだ。
「子ども育てるって、大変なんだなぁ」
Aを抱っこして歩いていた自宅までの帰り道。万次郎は茜色の空を見上げて呟いた。
それは決して嫌味なんかではなく、どちらかと言えば感嘆だった。大変だと何度エマに説かれても、全く揺らがなかった自分の決意に対する、感嘆。
別に子どもなんてどうでも良い。好きでもなければ嫌いでもない。
けれど彼の中でAは違った。いとも容易く折れてしまいそうな手足を動かして、必死に生きようともがいている姿に、心を動かされた。
今まで一人で戦ってきた少女を、これからは一人で戦わせたくない。確かに、そう思ったのだ。
「明日は昼まで俺と出かけよ、な？」
タオルケットに包まったAの頭を撫で、万次郎は微笑む。
これは予めエマ達と話し合っていたことだった。オレが昼までAを外に連れ出しておくから、その間にエマ達は歓迎会の準備を進めておいて、と。
エマには「準備が面倒なだけでしょ」とか図星をつかれたが、知らぬ存ぜぬ。
兎に角、この時の万次郎の気分は最高潮の良かった。なんせ大切なAの存在が大切な家族に受け入れられたのだから。
……そんな彼は気づかない。
Aの瞳から、段々と光がなくなっていくことに。
「ん、A……？」
目を擦りながら万次郎は隣の違和感に気づく。あるはずの温もりがない。もうタオルケットを抱きしめるだけでは眠れなくなってしまったのか、Aが居ないというだけで彼の目は覚めた。
トイレだろうかと考えて、十分ほどウトウト船を漕ぎながらAの帰りを待つ。しかし時間だけが過ぎ去り、一向に彼女は戻ってこない。
今度こそ本当に目が覚めた。
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2702人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「東京リベンジャーズ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
レモン - サイコーすぎんだろ‼️ 応援してます😆 (2022年7月2日 13時) (
レス) @page50 id: 97f09e59d6 (このIDを非表示/違反報告)
無塩バター(プロフ) - ぺたごんさん» ありがとうございます！今日中に続編に移行するつもりなので、続編もよろしくお願いします！ (2021年11月13日 8時) (レス) id: aad7259adc (このIDを非表示/違反報告)
ぺたごん - すごくすき愛した だぁじに悶えてます 続編待ってます！ (2021年11月13日 1時) (レス) @page50 id: 660f048392 (このIDを非表示/違反報告)
無塩バター(プロフ) - ただのバカですさん» そうです三ツ谷くんです（笑）多分本文でも書くと思うんですけど、みつや→みつゃ→みちゃ 的な流れから、みちゃになりました。続きものんびり頑張ります！ (2021年10月23日 0時) (レス) id: aad7259adc (このIDを非表示/違反報告)
ただのバカです - みちゃ？あっ、三ツ谷くんの事ね。え！？可愛くねぇ？みちゃだよ？胸取れるわ。ムフフ続き楽しみに待ってます。 (2021年10月21日 7時) (レス) @page45 id: acf5fa610c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
