遥かなる我が家−05− ページ18
「いらっしゃいました」
神倉の横にはスーツ姿の威厳たっぷりといった男性が立っている。それを見た久部は目を見開き固まった。
「帝日大の久部先生です」
『えっ』
「「くべ?」」
首を傾げるミコトと夕子に神倉は紹介する。
「久部くんのお父さん」
「愚息がお世話になっております」
そう言って久部の父は頭を下げた。
−会議室
「患者さんは軽度の気道熱傷と背中の広範囲熱傷で鎮静したまま集中治療を行なっています。ある程度完治するまで鎮静を継続するので当分会話は出来ません」
Aは持って来たお茶を久部の父のところへ静かに置いた。
その言葉にミコトは言う。
「発見時の胃の内容物はわかりますか?他のご遺体と同じものが出れば同じお店にいたという証拠になって、状況の解明や身元の判定に役立ちます」
久部父の口元がニヤリと笑う。
「胃を切り開いて中身を見ろと?」
「あっ、いえ……何かの検査で胃の内容物を吸引していたら中身がわかるんじゃないのかなと思いまして」
「我々が見ているのは生きた人間です。死体ではない」
その言葉を最後にラボの外へ出る久部の父を3人は見送る。
『本日はご足労頂き、ありがとうございました』
「いえ、一度伺おうと思っていたんです」
会釈するAに久部の父は言い放つ。
「単刀直入に言います。息子を解雇して下さい。安月給のバイトなら誰でも……」
「やめて下さい!」
久部は父の言葉に叫んだ。
それに対して父は低い声で嗜める。
「三浪して三流医大と言うだけでも底辺なのに勝手に休学して解剖医の使いっ走り。恥ずかしいと思わないのか!早く医者の道に戻れ」
「ほ、法医学者だって……立派な、医者です」
「この国の解剖率が上がらないのは何故だと思う?死人に金を使う人間がいないからだ。死体をいくら調べても生き返らせる事は出来ない」
その言葉にミコトとAと久部は黙る。
遠巻きに神倉もそれを聞いていた。
「はぁ……息子の好きにさせてもろくなことにはならないんです。私は父親として息子の将来に責任がある」
Aとミコトの前に来て言うと、久部の父は会釈して歩き出した。
「失礼します」
横を通りすぎる久部の父に神倉も会釈するのだった。
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鞠香(プロフ) - ともみさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!頑張ります! (2018年3月19日 19時) (レス) id: 3fdde94521 (このIDを非表示/違反報告)
ともみ - おもしろい!更新楽しみにしてます! (2018年3月19日 2時) (レス) id: f743b881db (このIDを非表示/違反報告)
鞠香(プロフ) - 青龍 葵さん» こんにちは。ドラマの疾走感凄かったですね!完結はもう少し先になりますが、それまでお付き合い頂けると嬉しいです!優しいお言葉ありがとうございました。頑張ります! (2018年3月17日 18時) (レス) id: 3fdde94521 (このIDを非表示/違反報告)
青龍 葵(プロフ) - あっという間にドラマ終わっちゃいましたが、どのような最後(完結)になるんだろう?中堂さんとの関係は?とか思いながら、まだまだ完結は先かと思いますが無理のない程度で頑張って下さい!更新、楽しみにしてますw (2018年3月17日 4時) (レス) id: 7069733e86 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鞠香 | 作成日時:2018年3月11日 14時