名前のない毒−08− ページ8
『やっぱり、中堂さんは優しい』
所長室のソファーに寝転びながら本を読む中堂に、Aは声をかける。
「何がだ」
『困った時はいつも三澄班を助けてくれるところですよ』
「そんなつもりは一切ない」
『そーですか。心配して損しました』
いつものツンケンした態度にAは頰を膨らませる。
すると、本から目線を外しAをじっと見つめた。
『?な、中堂さん?』
「何が損なんだ」
『えっ?』
「お前は何を心配したんだ?」
『!』
自分の失言に気付いたAは思わず両手で口元を押さえ、顔を赤らめた。
それを見て中堂は少し面白そうに口角を上げると、ソファーから起き上がってAの目の前まで来ては顔を覗き込む。
『ちょ、中堂さん!近いです』
「俺の質問に答えろ」
『や、中堂さん、だめ。ほんとにもう夕子戻って来ますから……離れてっ』
中堂の肩を押して距離を取ろうとするが、その手は軽々と掴まれてしまう。
「ほう……と言うことは裏を返せば今は2人きりだ。好都合だな」
『わたしとっては不都合極まりないです』
若干涙目になっている彼女に、追い討ちをかけるように中堂はAの耳元で低く囁く。
「随分余裕だな?A」
『っ!よ、余裕なんて……!』
「早くさっさと言え。東海林が帰ってくるぞ」
その言葉に観念したように、Aは小さく呟く。
『別に、その、中堂さんが……ミコトに、優しいな、なんて、』
「クククッ」
中堂は満足気に笑うと、A頭を優しく撫でた。
「随分可愛らしい嫉妬だな」
『っ、妬いてません!』
必死に否定するAを無視して、中堂はそのままラボから出て行った。
『はぁ……からかわれた。完全に』
火照った顔を冷やすように、両手で頬を抑えたそこは熱かった。
名前のない毒 -fin-
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カハラさん(プロフ) - 中堂先生のお話ないかな〜と探していたところ、こちらに辿りつきました。とても楽しいです!そして胸キュンしてます。ステキなお話を作ってくださってありがとうございます。 (2021年2月23日 8時) (レス) id: 1af5439158 (このIDを非表示/違反報告)
ミヤ(プロフ) - 質問よろしいですか? (2020年12月26日 16時) (レス) id: 7b57897ee4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鞠香 | 作成日時:2018年1月31日 23時