誰がために働く−06− ページ41
ミコトの推察に夕子は声をあげた。
「じゃあ、ミコトが危ないじゃん!」
「気をつけて下さいよ」
「はい」
『でも、それ……』
「え?Aも何か気になることあった?」
『あ……ううん』
「大丈夫。Aは安心しなよ。これは私宛てだから」
そう言ってミコトは微笑んだ。
実はこの脅迫文に思い当たる節があるAだが、自分の事ではないだけに本当はミコトじゃないよ、と声をかけてあげられなかった。
その夜、ラボのパソコンでミコトはCT画像を詳しく調べていた。
そこに、中堂が現れる。
「例のバイク事故の脳か」
「はい。解剖の時に動脈瘤が見つからなくて、CTで見つけられないか探しているんです」
「動脈瘤がない場合もある」
「そうなんですよね……でも、気になって」
カチ、カチ、とマウスを動かすミコトに、中堂は話し始めた。
「脅迫状。あれは俺に宛てられたものだ。お前のじゃない」
ハッキリした物言いに、ミコトは振り返ると中堂に言った。
「お前とは誰をさす言葉ですか?」
「……三澄じゃない」
「心当たりがあるんですか?」
「さあな」
「あっ、前の奥さん?」
「なんの話だ」
「バツイチなんですよね?」
「誰が言った。ガセネタだ」
「なら、どんな心当たりが」
「あり過ぎて分からん。俺は恨まれやすい体質なんだ」
「恨まれやすい性格の間違いじゃ?」
怪訝な顔をしてミコトは言うと、ふと既視感に襲われる。
そう言えば、昼間の歯切れの悪いAの表情と言いかけた言葉は一体何だったのだろう。
もしかして、脅迫文が中堂宛だと何か気付いていたとしたら……。
「とにかく相手は俺だ。三澄が心配する事はない」
「……それ聞いてハイ、そうですかって安心しましたってなると思ってるんですか?自分宛だと言い切る根拠があるんですよね?」
そう詰め寄るミコトに中堂は徐ろに鞄を漁りだした。
「今まで何枚も受け取ってる。まぁそういう事だ」
「いったい誰が」
「さあな」
手渡された何枚もある紙には似たような脅迫文が書いてあった。
「どんな罪を犯したんですか?」
「罪のない人間なんているのか?」
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カハラさん(プロフ) - 中堂先生のお話ないかな〜と探していたところ、こちらに辿りつきました。とても楽しいです!そして胸キュンしてます。ステキなお話を作ってくださってありがとうございます。 (2021年2月23日 8時) (レス) id: 1af5439158 (このIDを非表示/違反報告)
ミヤ(プロフ) - 質問よろしいですか? (2020年12月26日 16時) (レス) id: 7b57897ee4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鞠香 | 作成日時:2018年1月31日 23時