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その168 ページ26

給湯室でカップを洗いながら顔の熱を冷ます。偶然とはいえ、諸伏警部と間接キスしてしまった。それもみんなが見てる前で。

間接キスはヒロと数えきれないほど経験してるはずなのに、こんなに恥ずかしがるなんて私そんなにウブだっけ⁉

ヒロの場合は直接の方が先だったから、初めて間接キスした時はそんなに恥ずかしくなかった。直接の時は心臓バクバクだったけど。

私がコーヒーを全部飲んだ上、カップも持ち去ってしまったため、諸伏警部に新しいコーヒーを淹れてあげた。

コーヒーを持って、座っている諸伏警部の斜め後ろに無言で立った。気配を感じたのか諸伏警部が振り返る。

いつもなら笑顔で渡しているのだが、今回は恥ずかしさがあるためうまく笑えず無表情になってしまう。

『さっきは諸伏警部のコーヒーを“知らずに”飲んでしまってすみませんでした。』

わざとじゃなくて偶然だったことを強調して謝った。ここ大事だから。

諸「いえ、気にしていませんよ。Aさんが大胆に飲み干してくださいましたので。」

『過失の割合は50:50です。勝手に他人のコーヒーを飲んだ私も悪いですが、飲みかけのコーヒーを私が取りやすい位置に置いていた諸伏警部にも否はあります。』

なんとも無理矢理な理由で諸伏警部にも罪を被せた。こうでもしないと照れ隠しできない。

『ということで、罰として私は諸伏警部に新しくコーヒーを淹れたので、諸伏警部には私が淹れたコーヒーを飲んでもらいます。』

諸「それは嬉しい罰則ですね。」

『勘違いしないでくださいね。飲んでもらうのはただのコーヒーじゃありませんよ。』

持っていたコーヒーを一口飲んで諸伏警部の前に置いた。もちろん、口をつけた所は拭かずに。

『私の飲みかけを飲んでもらいます。』

私だけが間接キスするのはなんか嫌なので、強引な方法だけど、諸伏警部にも私と間接キスしてもらう。

なんて思いつつも、本当はしてほしかった。恥ずかしくてあんな言い方したけど、心の中では間接キスしたことはすごく嬉しかった。

飲みかけのコーヒーを押し付けてすぐ自分のデスクに戻った。諸伏警部の反応が気になるからチラッと見ると、私と同じ場所に口をつけてコーヒーを飲んでいた。

おいしそうに飲んでくれている姿を見て口元が緩む。やっぱり好きな人と間接でもキスできるのは嬉しい。諸伏警部も同じ気持ちだといいな。

でも、諸伏警部とは距離をおくって決めたのに、こんなにイチャイチャしていていいのだろうか。

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作者名:おひたし | 作成日時:2019年6月16日 20時

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