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第40夜 ページ40

ym side


「……大貴と離れるとね、なんだか息苦しくなるんだ。」

「……なにそれ?」


大ちゃんたちが出ていったドアを見て話し始めた知念に首をかしげると、彼はそっとうつむいた。


「僕、大貴ってバカだと思ってたんだけどね。……うん、バカはバカなんだけど、やっぱり頭良いんだ。」

「えぇ、なにそれ。結局バカなの?」

「いや、なんか、伊野ちゃんと同じ頭の良さっていうか。……わかる?」



俺は小さくうなずく。
へらへらしてるようで全部を見通してるような、そんな頭の良さを持つ伊野尾ちゃん。大ちゃんも、きっと人の気持ちには敏感で、知念はそのことが言いたいんだろう。



「大貴と伊野ちゃんはきっとね、僕たちには気付けないぐらいのことを考えてて……それで、僕がいないところで、一人で悲しいことを考えてるんじゃないかって、息苦しくなるの。」


「……なるほど。」



そんな俺には考えつかないことを考えつく知念もよほど頭が良いと思うけど、話が脱線しそうなので言わないでおく。


「……だから、僕、涼介と一緒にはいられないね。」

「え、?」


突然の話の展開に驚くと、知念はにっこりと笑ってこちらを見た。


「だって、涼介が『一緒にいないと息苦しい』って思う人は、僕じゃないもん。『一緒にいないと息苦しい』って、結局は離れたくないってことでしょ?」


あぁ、そっか。
俺が四六時中考えてしまう彼のことは、きっと知念にばれてた。
それと同時に知念ももう、自分の気持ちに気がついてたんだ。






ピンポーン。


軽やかなインターフォンの音がなり響いて、知念が即座に玄関へ走っていく。

まるで、玄関の向こうに自分を迎えに来てくれた人がいると知っているみたいだった。




「っ、大貴!」


玄関のドアが開く音がして、知念が彼の名前を呼ぶ声がして。

すぐにそちらに向かうと、知念を抱きすくめる大ちゃんがいた。



「伊野ちゃん、近くの公園にいる。」


目があった大ちゃんが、そう呟く。
その腕から解放された知念は、涙目でこちらを見て、笑った。


「涼介、僕たち、別れよう。」


「……ん、ごめん、ありがとう。知念のこと、大好きだよ。」


走り出した俺に、知念はなにも言わなかった。


俺は、誰よりも、何よりも大事な君の元へ向かう。




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作者名:鎖空 | 作成日時:2017年3月21日 13時

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