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第21夜 ページ21

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もう、やめよっか。

こんな関係、良くないよね。




まっすぐな瞳と目が合って、用意していた言葉はすぐに消えていく。




「……やまだは、」


「ん、なに?」




山田は、おれのなんなんだろう。

おれは、山田のなんなんだろう。



「恋人とか、つくらないんだっけ?」

「なに、急に。つくらないけど」


そうだよね、山田はファンのみんなが大好きだもんね。
この仕事を続けるためにおれとの関係をしてるって言っても、過言じゃないもんね。



「……山田、仕事好きだもんね」



別に、山田の恋人になりたいと思ったわけじゃないよ。男なんて好きじゃないし。



「……ごめん、帰る」


「いや、雨降ってるし。泊まってきなよ」


「いや、いいよ。服は、洗濯して返すから」


「でも、」



例えばおれが女の子だったとして。

山田もおれも一般人だったとして。

この関係はそのままで。


そしたら、二人はどの方向へ向かうのだろう。恋人同士になったりするのかな。






だめだよ、そんなこと考えちゃうと。


どこにも行けない、何にもなれない、特に向かう目的もない、お互いに停滞を願ってる。

そんな二人の関係は、おれにはちょっと虚しすぎるから。




「ごめん、じゃーね」


「ちょっ、伊野尾ちゃ……」



おれの腕を山田が掴むのと、おれが玄関のドアを開けるのが重なる。

山田が、息を飲むのがわかった。





「……知念と、大ちゃん……?」


ドアの向こう側に立っていたのは、知念と大ちゃんだった。



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作者名:鎖空 | 作成日時:2017年3月21日 13時

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