いくつもの夜を (ページ12)

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第12夜ページ12

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翌日。

「……えーと……ん、了解」

そんな声が聞こえてきたのは、冠番組の収録があるテレビ局の楽屋だった。

ドアノブを掴んだまま、ドアを開けることためらった。

ためらった理由は、山田の声だったからと言うわけではなく、電話中だったからだということにしておきたい。

「んー、ちょっと早く来ちゃって。暇なんだよねぇ……」

早く来すぎだろ、と内心ムカつく。
山田のせいでよく眠れなかった睡眠時間を取り戻すため、おれだって一時間も早く楽屋に来たのに。

「あ、そろそろ家出る？暇つぶしできた、ありがと……え？」

普通に続いていたらしい会話の途中、山田の怪訝そうな声が響いた。

「……伊野尾ちゃんのことなら、大丈夫だから。……ってか、関係ないじゃん。俺のことだもん」

じゃーね、って少し怒ったような山田の声が聞こえた。

電話の内容におれの名前が出てきたのは驚いたけど、それより。楽屋に入るタイミングを完全にのがした。
あー、どうしよう。

「……っあ」

思ったよりも山田がおれの名前を口にしたのに驚いたのか、手に力が入っていたらしくドアノブが回ってしまった。

スマホを片手にソファに座る山田と目が合う。