いくつもの夜を (ページ11)

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第11夜ページ11

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「……ふわあぁ、ねみぃ…」

大ちゃん家から帰ってきて、すぐにベッドへダイブした。

連日の行為で痛む体はベッドに受け入れられて、すぐに夢へ堕ちようとする。

「……んぁ？」

そのまま寝ようとしていたのに、ポケットに入れっぱなしだったスマホが震えた。

画面には、『山田』。

「もしもし、いのおでーす……」

『もしもし、山田です。…伊野尾ちゃん、めっちゃ眠そうだね』

「んー、そう…？」

山田の声は心地よく耳に響いて、おれの眠気を引っ張り出そうとしてるみたいだ。

『眠いとこ悪いんだけど、今日、俺ん家来れる？』

「…ん、やまだのいえ？」

あれ、今日は彼女さんが来るんじゃないのかなぁ？おれに紹介してくれるとかぁ？

ふわふわする頭で考えられる可能性はそれぐらい。

『伊野尾ちゃん、起きてる？大丈夫？』

何も言わなくなったおれを心配してくれるのか、山田の声がする。
でも、今のおれには子守唄程度にしか聞こえないよ。

「…今日は、やめとく。やまだもオフでしょ、ゆっくりしなよ」

『もう、自分が眠いだけでしょ？ …でも、いいや。別に今日じゃなくてもいいし』

そうそう、彼女の紹介なんていつだってできるんだし。

『その代わり、次のオフは俺にちょうだい？約束だよ』

「はいはぁい、りょーかい、」

耳元で、くすくすとこちらを笑う息遣いが聞こえる。なんだか、すごく心地いい。

『ゆっくり休んでね。…じゃあ、おやすみ』

「…うん、おやすみ」

なんだか名残惜しいような、そんな気持ちで電話を切る。

おかしいな、おれが名残惜しいって思う理由なんてないのに。なんでだろ？

「…、寝よ」

そんなことをこのまま考えていると、気づいちゃいけないことに気づきそうで、怖かった。

だから山田の声の余韻に浸って、なんだかすっきりしないような気持ちで目を閉じた。

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