内心と外面は噛み合うものじゃない ページ10
時というものは、人が思うよりも早く進む。屋根上で溢した懺悔はもう三日も前の事になってしまい、あれ以来、煉獄はAの前に一度も現れなかった。
Aは自慢の長髪を一つに結い、紅を薄く塗る。鏡の前に座ると、お淑やかそうな女が目の前に居た。艶やかな着物と美しい髪飾りは、煉獄が贈ってくれたものだ。
「A、___様がお見えになられたわ。そろそろ客間に向かいなさい」
「…はい、父上」
襖を開けたAの父は、彼女に目もくれずにそう言った。
いつもは家を追い出すくせに、こういう時だけ家に呼び付け、やれお見合いだ やれ婚約だ と勝手に決めつける。
此処で婚約を破棄にしたら、妹が自分と同じ羽目になってしまう
それは避けたかった。彼女をよく分かってくれるのは家族で妹と母だけだったから、幸せを壊してあげたくないのだ。
浮かない足取りで客間に向かう。
高級和菓子に良い香りのお茶。没落貴族が今更見栄を張るなんて笑える話だ と、Aは鼻で笑った。
隣に座った父親が彼女に耳打ちをする。
「お前は黙って笑っていれば良い。質問されたら愛想良く返すんだぞ」
「分かっています」
髪飾りを指で弄びながら答えた。それが終わるとほぼ同時に、部屋の外から知らない者の声が聞こえてきた。
「遅くなって申し訳ありません。Aさんとの見合いに参った、____です」
「どうぞ、お入り下さい！」
愛のない結婚生活の第一歩がこれから始まるのか。Aは溜め息を一つ吐いて、笑顔を作った。
上手く…笑えていると良いんだけれども。
遠いところわざわざ とか、道中怪我はありませんでしたか とか。父親が婚約相手に媚を売っている中、Aはぼんやりと、視点を定めずに微笑んでいた。半ば、虚無だった。
体型はお世辞でも締まってるとは言えず、脂汗が滝のように溢れている目の前の男。
Aの顔を舐めるように見回した後、やっと口を開いたかと思えば
「顔は…まぁまぁ整っていますね。僕の婚約者になるには…及第点かな」
「…滅相もありません」
(私が及第点だったらお前なんか点数付ける価値も無いわ)
眉間に皺が寄る。家の為だ。此奴は金だ、金が何かを喋っている と思い込むことでなんとか暴言を抑えた。
これからの事を話し込む父親と、相手方の両親の声を背景に、Aは庭の紅葉を眺める。
(…杏寿郎との縁談だったら、どうだったかね。作り笑顔って案外疲れんだよ)
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橘欅(プロフ) - 柚葉さん» 此方こそ読んでいただき感無量です！拙い文章ですが私なりに煉獄さんのかっこよさを出したつもりの作品でした！本当にありがとうございます！ (2021年4月16日 22時) (
レス) id: 008152d6a1 (このIDを非表示/違反報告)
柚葉(プロフ) - やっぱり煉獄さんはカッコいい！！素敵な作品を読ませていただきました！ありがとうございました！！！ (2021年4月15日 8時) (レス) id: 33c3d87eb8 (このIDを非表示/違反報告)
めい(プロフ) - コメント失礼します。私名前がメイなんですよ。それで名前ひらがなで読んでったらめいめいメイになりました！面白すぎません笑？ (2020年3月18日 22時) (レス) id: f101cde2b9 (このIDを非表示/違反報告)
橘欅(プロフ) - あおさん» ありがとうございます！最近寒いですね〜、私の地方にも白鳥が訪れて来ました。最後まで御愛読ありがとうございました！次回作も是非目を通して下さいね！ (2019年11月12日 22時) (レス) id: 4f6b87549d (このIDを非表示/違反報告)
あお(プロフ) - 橘欅さん» 楽しみに待っていますね！無理はなさらずに、最近は寒いので体を冷やさないようにしてくださいね〜 (2019年11月11日 2時) (レス) id: 03cb9b6635 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：橘欅 | 作成日時：2019年10月27日 1時
