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「どうして迎えに来たのよ‼私の一生に一度の結婚式を邪魔しないで頂戴‼」
煉獄の腕に抱かれていたAはじたばたと身動きをして暴れる。その声は必死で、ヒステリックにも似たようなものだった。
「少し話を聞いてくれ。君の母上に会ったんだ」
「母さんに…?」
身動ぎがぴたりと止む。煉獄はあの時話した事をそっくりそのままAに伝えた。母が、今までの大変な苦労を悔いている事、家の事はもう気にしなくて良いという事、幸せになって欲しいという事を。
Aは顔を掌で覆い、ぽろぽろ涙を流した。小さな手からちらりと見える口は歯を強く食いしばっていて、今迄の苦労を飲み込もうとしているかのように見えた。
「勝手な真似だが、君の母上にそれなりの額の家禄を渡した。恐らくそれで父上の代までは生活が成り立つだろう。だから、君が婚約しなくても大丈夫なように手配はしていたんだ」
「でも、それじゃ杏寿郎のお金が…‼」
「俺は馬鹿だから金の使い方がわからない。だったら、その金を誰かの為に渡す方が得策だと思った」
嗚呼、この人は何処までも優しい人だ。普通、愛する者のために此処までしてくれる人は居るのだろうか。多分、居ない。
人気の少ない村外れで降ろしてもらい、二人で向き合った。煉獄がAを抱き締める。
「言うのが遅くなってしまったが…
とても綺麗だ。今迄で一番綺麗だよ」
Aは彼の背中に手を回した。
「嘘よ、私なんて綺麗な筈がないわ。手は傷だらけで汚いし、顔なんて化粧が崩れて…まるで醜女だわ」
「そんな事ないさ。その手の傷は他でもない君の勲章だ。顔だって、俺は君程のの美人を見た事が無い」
“どんな君だって愛そう” この言葉がAの心を溶かしていった。重苦しい鎖が一気に千切れ果てたのだ。熱い熱い炎のような愛で。
「私、幸せになって良いの?」
「勿論。幸せにするさ。どんな時だって俺が君の盾になる」
「杏寿郎、ずっと酷い事ばかり言ってごめんなさい…貴方の思いを無下にしてしまっていたわ。家の為とか言って、ずっと貴方から逃げてた。でも、私も貴方の事が大好きだった。今でもそうよ」
Aの唇に慈雨の如き暖かい接吻がされた。思わず、ゆっくりと目を閉じる。
母さん、蛍火。幸せってこの事なのね
すごく胸が暖かいわ
「A、俺の所に嫁いでくれないか」
「…喜んで」
あなにやし、えをとめを
二人を祝福するかのように、白鳥が二羽空を待っていた
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橘欅(プロフ) - 柚葉さん» 此方こそ読んでいただき感無量です!拙い文章ですが私なりに煉獄さんのかっこよさを出したつもりの作品でした!本当にありがとうございます! (2021年4月16日 22時) (レス) id: 008152d6a1 (このIDを非表示/違反報告)
柚葉(プロフ) - やっぱり煉獄さんはカッコいい!!素敵な作品を読ませていただきました!ありがとうございました!!! (2021年4月15日 8時) (レス) id: 33c3d87eb8 (このIDを非表示/違反報告)
めい(プロフ) - コメント失礼します。私名前がメイなんですよ。それで名前ひらがなで読んでったらめいめいメイになりました!面白すぎません笑? (2020年3月18日 22時) (レス) id: f101cde2b9 (このIDを非表示/違反報告)
橘欅(プロフ) - あおさん» ありがとうございます!最近寒いですね〜、私の地方にも白鳥が訪れて来ました。最後まで御愛読ありがとうございました!次回作も是非目を通して下さいね! (2019年11月12日 22時) (レス) id: 4f6b87549d (このIDを非表示/違反報告)
あお(プロフ) - 橘欅さん» 楽しみに待っていますね!無理はなさらずに、最近は寒いので体を冷やさないようにしてくださいね〜 (2019年11月11日 2時) (レス) id: 03cb9b6635 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:橘欅 | 作成日時:2019年10月27日 1時