365日 (ページ6)

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MONSTER⑥ ページ6

立て続けの解剖も終わり、定時を迎えると
珍しく和山さんは、用事があると
早々に帰っていった。

三澄班の3人も、いつの間にか帰られたようだ。

私は、報告書を書く手を止め
固く扉が閉められた所長室を見る。

その先にいる系さんの事を想像していると
急に扉が勢いよく開いたので
慌ててPCに向き直った。

所長室から出てきた系さんは
足早にまっすぐ私の所まで来ると
ぐいっと腕を持ち上げ
そのまま所長室へ引きずり込んだ。

油断していた事もあり、所長室に入ると
系さんの胸に飛び込む格好になってしまった。
乱暴に、扉と鍵が閉められる音がする。

『す、すみません！』

すぐに離れようとしたが、そのままきつく抱きしめられた。

職場なのでどうしようと思ったが
不謹慎にも嬉しく思ってしまい
心の中で所長に謝罪しながら
何よりも触れたかった彼の腕の中に
身を預けることにした。

彼の心臓の音が聞こえる。

久しぶりの彼の体温と匂いに、ほっとして
心にすとんと何かが落ちてくる。
あんなにも私を捉えて離さなかった闇が
するすると後退していくのが分かった。

随分長い間そうしていたように感じた。
ずっとこのまま、離れたくないと思った。

きゅっと、抱きしめる腕に少し力が入ると
系さんは大きく深呼吸をした後
ゆっくりと身体が離れる。

離れがたくて、思わず、彼の腰に巻かれた
つなぎの端を握った。

それに気が付いた系さんは、私の手を取り
ソファへと座らせると
もう片方の手をソファの背もたれにつく。

自然と見上げると、彼は身を屈め
少しだけ強引に唇を重ねる。

何度も角度を変え、ここ数日の隙間を埋めるような
深いキスだった。

たまらず涙が溢れてきて、ゆっくりと目を開けると
燃えるような瞳の系さんと目が合う。

繋いだ手をぎゅっと握ると
系さんはもう一度強く抱きしめてくれた。

「さすがにここではまずいな。」

掠れた声でそう言うと、身体を離し、私の隣に腰掛けた。
手を繋いだままで、少し困った表情で優しく微笑む。

少し遅れて言葉の意味を理解し
顔が熱くなるのを感じたが
そのまま目を逸らさず、私もつられて微笑んだ。