【募集企画】大聖堂の地下階層【本編】

紙の上の世界観【アリア・リッチ】 ページ11

陸に来てから、5年目になる。最近の趣味であるスケッチをすることにした。何気ない日常を絵にする。アリアにとって、興味を唆られるものでもあり、新しい発見にも繋がる。
海の中で見られなかったものが、目の前に広がっているのだ。自分で見たものを想うように、そのままペンを動かすと、新しい世界観も産まれる。

今日は可愛らしい一輪の花を描くとしようじゃないか。スケッチブックをとペンを片手に、花を目に映す。花の名前は【クリスマスローズ】。とても可愛らしい花だ。サラサラとペンを走らせると、紙の上にしか例えることの出来ない、幻想的な絵になる。

「僕としたことが、つい夢中になってしまって、実物とは違うものを描いてしまいましたね。ふふ、これも良い機会だ。今回は、この絵を子供達に見せるとしましょう」

人魚でもこれだけ描けるんだという自慢をしてしまいそうだが、子供というのは可哀想な程に純粋てある。言ったことを信じてしまい、すぐに相手に飲まれることが多い。そんなところがとても可愛らしいと思えるか。可愛らしいだけでは、生きていけない。だからこそ、手を貸したくなってしまう。子供は、罪深い生き物でもあるから、接し方を誤ってはいけないのだ。ほんの少しのことで、純白が汚れてしまうこともある。

「この絵を見て、何を感じるか……。感受性も豊かになりそうだ」

ただ見るだけでは、感受性は備えることは出来ない。何を想ったのか、何を感じたのか。作品の何が好きだと感じたのか。【想う】ということが一番大事である。

「想うだけで、一枚の白紙から世界が生まれるなんて、陸は面白さで溢れていますね。この景色も一度きり、海の中は常に同じだ。同じ世界でもこんなに違うなんて」

書き終えたスケッチを持って、子供達に見せに行く。その姿は本当に子供のように無邪気な笑顔だった。

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