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「今日はありがとう」
「こちらこそ。またしよっか、デート」
「ふふ、うん」
じゃあ、ありがとう。
少し名残惜しかったけど、
そう言ってシートベルトを外し車を降りようとした。
でも、シートベルトに手をかけた瞬間宮近の手が重なって。
「っ、！」
一瞬だったけど、重なった唇。
心臓の動きが早いのがわかる。
頭が真っ白になって、何も言えずに宮近を見た。
「ごめん、我慢出来なかった(笑)」
「…ばか、」
「また月曜日ね、おやすみ」
おやすみ。そう返したら、優しく頭を撫でられた。
それから自分の部屋まで歩いて、ドアを開けた瞬間
力が抜けてその場に座り込んで。
もう、ばか。
ドキドキしすぎてまだ心臓が痛い。
私の頭の中は宮近でいっぱいだった。
—————
それから月曜日になった。
宮近とあんなことがあって、どんな顔をしたらいいんだろうって少し悩んだけど、
部署は違うし、会社内で会うこともあれば会わないこともあるから。
そう思いながら、会社の最寄駅から歩き始める。
「Aおはよ」
「っ、びっくりした〜。うみ、おはよう」
「ふっ、海斗かと思った？」
「っ、！」
「うわ、わかりやすっ(笑)」
後ろから声を掛けられてドキッとしたけど、
勘付かれないように自然と振る舞ったつもりだったのに。
私の顔を見るなり、ニヤニヤと笑ってるうみ。
もしかしてうみは全部知ってた？
「…うみは知ってたの？」
「んー、なにが？」
「だから、その、宮近が私を…」
「あー、好きだって？てか海斗言ったんだ？」
「ばか、声でかいよ」
海斗にしては言うの早かったねー、なんて他人事のように笑って。
てか知ってて酔ってた私のこと宮近に預けたんだ？
結局うみにしてやられたわけか。
「で？Aはなんて答えたの」
「知ってるでしょ？私が浮気されて別れたばっかって」
「じゃあ、断ったんだ？」
「…返事はまだいらないから、ちゃんと俺のこと見てって、言われた」
「うーわ、あいつかっこいいね」
そう言ってまたニヤニヤするうみ。
もう完全に楽しんでるじゃん。
「正直どうしたらいいかわからない」
「それはどういう意味？」
「…だって、私彼氏と別れたばっかだよ」
「それは関係なくね？」
「でも、」
私がそう言いかけた時、ちょうど会社に着いてしまって。
うみはじゃあ、夜話聞くから。って言って
颯爽と自分の部署に行ってしまった。
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作者名：葵 | 作成日時：2021年10月14日 2時
