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「着いたよ」
「…水族館？」
「うん、ベタなことしてみようと思って」
デートの定番でしょ。なんて、言って車を降りた宮近。
すぐに私の方のドアを開けてくれて。
然りげ無く何でもやってのける宮近に感心する。
「水族館とか何年振りだろ、」
「…元彼と来たことなかったんだ？」
「うん、いろいろ行ったけど水族館はなかったかも」
私がそう答えると、自分で聞いたくせに少し気まずそうな顔をしていて。
なら、聞かなきゃいいのに。って少し笑った。
「なに笑ってんの」
「ううん、ほら行こ！」
そう言うと、テンション上がりすぎて転んだら困るから。なんて手を繋がれた。
宮近って意外と策士？
絶対モテるのに、なんで私のこと好きなんだろうって思った。
「どうした？」
「ううん。…宮近って、モテるよね」
「なに急に(笑)」
「いや、優しいし女の子の扱い慣れてるっていうか」
「でも好きな子以外にモテても嬉しくない」
「それはそうだけど、」
つまり、今の宮近にとっては
私に好きになってもらえないと嬉しくない、ってことだよね。
なんで私なんかとは思うけど、すごく思ってくれてるのは伝わってきて。
「ごめん、」
「なんで謝るの？」
「待つのは慣れてるとか言っといて、これじゃ急かしてるよな」
「…ううん、そんなことない」
宮近に少しずつ惹かれてるよ、なんて。
まだ言葉には出来ないけど、伝われって思いながら繋がれた手に少し力を入れる。
それに気付いた宮近はありがとうって笑った。
「ねぇ、ペンギン見よ！ペンギン」
「ふふ、いいよ。ペンギンあっちだって」
それからぐるっと館内を1周したら、意外と時間が結構経っていて。
あぁ、お腹空いたなぁって思った。
「お腹空いた？」
「…エスパー？」
「Aがわかりやすいの(笑)なに食べよっか」
「んー、何でもいい。あ、いや、」
そう言ったけど、前に何でもいいって困るんだけどって言われて
元彼と喧嘩しかけたことあるなぁって思い出して、急に歯切れが悪くなる。
「ん？なんて？(笑)」
「いや、何でもいいって言われるの困るかなって」
「別に困らないけど。じゃあ、米と麺どっち？」
「んー、麺？」
「奇遇だね、俺も同じ気分」
じゃあ、パスタがいいな。それでもいい？なんて。
ほんと神対応すぎてびっくりした。
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作者名：葵 | 作成日時：2021年10月14日 2時
