イライさん家のメイドさん【第五人格】 (ページ14)

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１３話ページ14

「おかえり、A」

「お帰りになられてたんですね。ありがとうございます。」

玄関を開けると、制服から部屋着に着替えたイライ様がいらっしゃった。

「お花を買いに行ってたの？」

イライ様が・・・お花って・・・可愛い・・・

「はい、新しいお花屋さんができたという話を耳にしましたので。そちらに行って参りました。」

「へぇ・・・ずいぶんたくさん買ったんだね。」

「こちらは旧友からの頂き物でして・・・こちらはイライ様のお部屋の花瓶に生けさせていただきます。」

「旧友って言うと日本のかい？いいなぁ、私も日本にいたころのAに会ってみたかったよ。」

「あまり今と変わりませんよ。面白くもありませんし。」

本当は大好きな人が少しでも自分の過去を気になってくれていることが嬉しかった。

「きっと幼いAは可愛いね。」

「そんなことはございませんよ。でも・・・」

「でも？」

「気になっているようでしたら、次に実家に帰省するタイミングでアルバムを少しもってきますか・・・なんて、お世辞でしたね。すみません。」

らしくないな。

「主人とメイド」

その関係には慣れたはずだし、無欲でいるつもりだったのに。

最近になって自分が欲深い人間なんだと感じることが増えてしまった。

彼からの言葉を期待してしまう自分がいつもどこかにいるのだ。

「お世辞なんかじゃないよ？」

イライ様は私にゆっくり近づく。

鼓動が早まる。

「あっ・・・あの、イライ様？」

いつもより近い距離。

彼の吸い込まれるような碧い瞳が私を見つめる。

「私はAのこと、特別に思ってるよ。お世辞でもなんでもない、君には本当のことしか言わない。」

やばいやばいやばいやばいやばい・・・

「私も・・・おな・・・じです。」

隠していた心が

私の意志と関係なく言葉となって

口から零れる

「A、もしかして・・・」

あぁ、だめだ

気づかれてしまったら、私は貴方のそばにいることも叶わなくなってしまうのに。

「わ、私はこれで・・・。」

「待って、A！」

駄目です、イライ様。

『私のことが好きなのかい？』

貴方がその言葉を口にしたら

もうここにはいられませんから。