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フキちゃんはもとより人懐こくてとてもかしこい猫なのだろう。
食べ終えたフキちゃんをおそるおそる抱き上げるとちっとも暴れたりなんかしないで、おとなしく腕の中におさまってくれた。
「家に帰ろうね。」
しゃべりかけたら、まるで言葉がわかっているみたいにまるいおおきな瞳で私を見上げたから、そっと眉間を指先で撫でる。なつかしい、猫の毛のなめらかさ。
「私、この子の貼り紙のとこまで行って、飼い主のひとに連絡するので、ここで。」
「えっ、なら俺も行きますよ！」
フキちゃんを抱えたまま丸山さんのほうへ向き直ると、目を丸くしてあらかじめそのつもりだったような口調で丸山さんはそう言った。
「猫抱えたまんまやと手え塞がるし、ふたりおったほうが便利やないですか。」
「でも会社の方、戻ることになっちゃいますよ。」
「そんなん全然。家に帰ってもひとりでコンビニのおにぎり食べるだけなんで。」
自嘲するように目尻を下げて笑った丸山さんに、じゃあ、と私はうなずいて、私たちは寒空の下を歩き出す。
それは、静かで毎日なにも変わりのない日常に突如あらわれた奇妙な時間だった。迷い猫を抱えながら、丸山さんとふたりで歩いている。
「俺、海の近くに住むの、ずっと憧れとったんです。」
歩きながら丸山さんが言う。
「…毎日見てたら飽きますよ。冬は寒いし。」
なぜか、そんな思ってもいないことを言ってしまった自分に呆れる。素直じゃないのがかわいいのなんて、せいぜい十代までだろう。
本当は私だって海のあるこの生活が好きなのに。
冬の海はとくに。静かでちょっとさびしくて。
雑談ってやっぱり苦手だ。失敗ばかり踏んでしまう。
わずかに惨めになってうつむきがちにフキちゃんを撫でていると、
「でも、俺、夏より冬の海のほうが好きです。静かやし。見てると落ち着きます。」
やわらかな口調で丸山さんは言った。
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蒼 夢見子(プロフ) - まゆ☆まゆさん» まゆ☆まゆ様、お久しぶりです…！早速コメントくださりありがとうございます。かなり前のお話をまだ読み返していただけてうれしいです…(T . T)少しずつの更新にはなりますがお付き合いいただけると幸いです！ (2022年11月20日 18時) (
レス) id: a5f8e6e331 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ☆まゆ(プロフ) - お久しぶりです。数日前に満月の夜は〜を読み返したばかりです(^^)また蒼夢見子さんの新作読めるの嬉しいです♪続きも楽しみにしてます。 (2022年11月20日 6時) (レス) id: 9548b7921c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蒼 夢見子
| 作成日時：2022年11月20日 0時
