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(sueyoshiーside)
沢本さんからの意地の悪い言葉に、詩は少しも動じていなかった。
「私が天才だったら、きっと今…ここにAAA綾瀬詩として立ってはいませんでした」
もし、詩があのコンクールで失格になっていなかったら。
きっと今も、ソプラノ歌手として歌っていたんだと思う。
それこそ、俺達と出会う事もなく。
「間違いばかりでした。だけど、そのお蔭で私は、歌声に感情を込める事の大切さを身をもって学んだつもりです」
ゆるりと笑みを浮かべた詩は俺たちのよく知っている女で。
「感謝の気持ちが伝わるように、これからも歌を大切にしたいと…今は思っています」
沢本さんに、そして客席に。
詩は深く頭を下げた。
「本日はこのような場を設けて頂き、誠にありがとうございました」
起きたことは、決して覆らない。
だからこそ、受け止めて前に進んでいくしかない。
詩はいつだって、そういう人間だった。
時に立ち止まって振り返ることはあっても、逃げることはしない。
宇「…格好よかったね」
末「ああ」
頼もしいな、という嬉しさにも似た感情と。
一抹の焦りを抱く。
宇「……秀太?」
末「ん?」
宇「どうかしたの?何か、考え込んだ顔してるけど」
末「…何でもないよ」
そう、と頷いた宇野ちゃんにはきっとバレているんだろう。
俺が何かに焦っているということに。
真司郎が将来の為に留学を決めて、詩も自分の音楽人生を貫こうとしてる。
隣の宇野ちゃんは、最近千晃と共に新しい試みを始めようとしているらしい。
西島もソロとしての活動の幅を広げていて、日高は相変わらず自分の理想の音楽を追い求めてる。
直也くんも、AAAのリーダーとして。ソロでは1人のアーティストとして、両立して頑張ってる。
比べたって、どうしようもないのはわかってるけど。
それでも考えてしまう。
俺ばかり、置いていかれているのではないかと。
ーー負けてられん
ーーもっと、もっと頑張らんと
焦りと共に、強くそう感じた。
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海(プロフ) - 海音さん» ありがとうございます!次章もマイペースに更新していきたいと思っておりますので、またよろしくお願い致します! (2020年2月20日 20時) (レス) id: 37dc25736a (このIDを非表示/違反報告)
海音(プロフ) - 楽しく読ませて頂いてます!すごく面白いです!!次の章も楽しみです!これからも頑張ってください!! (2020年2月19日 23時) (レス) id: 8f38073b2c (このIDを非表示/違反報告)
海(プロフ) - ゆうさん» かなり長かったと思うのですが、ありがとうございます!マイペースな展開と更新になりますが、これからも頑張って参りますので、お付き合い頂ければ嬉しいです! (2019年12月14日 18時) (レス) id: 37dc25736a (このIDを非表示/違反報告)
ゆう - 最初から一気に読んじゃいました!笑 とっても面白かったです! これからも頑張ってください! (2019年12月14日 16時) (レス) id: 3d09ff0bd0 (このIDを非表示/違反報告)
海(プロフ) - EYさん» ありがとうございます!ゆっくりで良いとお気遣いまでして頂き、本当に嬉しいです。マイペースに頑張って参りますので、これからもよろしくお願い致します! (2019年11月18日 20時) (レス) id: 00727ba42b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海 | 作成日時:2019年11月9日 18時