プロローグ ページ1
百日紅 A。
校内の二階にある生徒会室、そこにその男は居た。
二年生ながら生徒会長の座に付いている男。しかしながら、Aが生徒会長になったのは一年生の頃からだった。
入学当時から困っている人を黙ってでも助け、水波のように広がって行くAの良い噂。さらに教師の誰もが頷く程の頭脳と素行の良さ。気づけば、Aは生徒会長になっていた。
本人は勿論、首を横に振らず「はい、僕でよければ」と笑顔で喜んで引き受けた。
現在その生徒会長であるAは机に向かって、教師に頼まれた学校で行う行事に関する書類に手を付けていた。一度も手を止めずに行えるのは慣れ故の所業なのか或いは・・・。
「あの、百日紅さん！！」
そんな時、突然大きな音を立てて開かれるドア。
百日紅、と呼ばれた男はゆっくりと手に持っていた万年筆を机に置くと、書類に向けていた青い瞳をドアから入ってきた人物へ向けると柔らかい笑みを浮かべた。
「どうしたのかな？」
ドアを開けたのは、今年並盛中学校に入学したばかりの一年の女子生徒だった。
新品の制服を身に纏った女生徒はつい入学式で見た瞬間、見惚れた並中の生徒会長に視線を向けられ緊張でびくりと肩を揺らすも、ずかずかと男の前に向かう。
「大変なんです！」
そうだ、今は目で見たことを伝えるべきだ。ドクドクと煩い心臓を無視して机に手を置き、身を前に乗り出すと、声を張りあげて要件を伝える。
「道場で決闘が行われてて！それで、えーと・・・」
ダメだ。早く伝えようと勢い余って身を乗り出した余りに、会長の整った顔が近くて言葉が出てこなくて目のやり場に困った女生徒は焦って視線を下に落とす。
「うん、分かったよ。」
「へ？」
ポン、と頭に手を置かれる感覚がして女生徒は硬直してしまう。あの会長自ら自分に触れられた。な、なななにが起きたんだと一瞬にして頭が混乱して会長の言葉が耳に入ってこない。
「ありがとう、伝えに来てくれて。注意しに行ってくるよ」
そう言って静かに生徒会室を出っていたAの後の室内には、顔が林檎みたいに真っ赤になった女子生徒だけが取り残されていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 871人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「男主」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
天霧(プロフ) - とても面白かったです。次の更新待ってます (2021年6月15日 21時) (
レス) id: 8490818b21 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう - とても面白かったです。更新頑張って下さい！ (2021年3月8日 17時) (レス) id: 26b975bb56 (このIDを非表示/違反報告)
アル - えっ！？すっごい面白いです！続きがめちゃめちゃ気になります！ゆっくりでもいいので更新頑張ってください！楽しみにしてます！ (2020年8月17日 1時) (レス) id: 327b6bf4ac (このIDを非表示/違反報告)
moeka(プロフ) - 最近更新がなくて寂しいです。更新してくれたら嬉しいです。待ってます。 (2020年7月16日 3時) (レス) id: d61ed9781e (このIDを非表示/違反報告)
朱咲(プロフ) - 素直に面白いです。更新頑張ってください (2018年3月5日 17時) (レス) id: f509419ddf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：空天 馬
| 作成日時：2018年2月1日 22時
