一匹の悪役の話 (ページ29)

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25話ページ29

--------アップルside--------

リクルーティングを疎かにするわけにはいかない、というMr.Vの言葉もあり、私とジャックハート、マルフィ、ハーデス、ホック、ヴェールは通常通りゲストの前に出ていた
1人だけ出番のないエイトフットは、なにかあった時のためにマミの側にいる

今日の公演はこれでラストとなった
休憩のたびにマミの様子を見に行ったが、徐々に弱っていく魔力以外の変化はない
このままだと本当に…

ふと、彼女の仮装をする少女を見つけた
近付いて目線を合わせると、その子は嬉しそうにニコニコと笑う

「素晴らしい、よく似合ってる
マミが好きなのかな？」

「うん！きれーで、やさしくて、かっこいーの！」
りんごさんは？マミさんすき？」

「……好きですよもちろん
レディ、あなたに負けないくらい」

少女の頭をそっと撫でる

マミが好きだ
それが仲間としてなのか、はたまた別の意味でなのかはまだ定かではない
だからその答えが出るまで

死なせはしない絶対に

リクルートが終わると同時に、ファージャが上空から私たちを呼んだ

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--------エイトフットside--------

うなされるマミの額の汗を拭う
側にいるだけで何もできねぇっつーのは、なかなかに堪えるものだと今知った

さっきから何度も最悪の展開を想像し、その度に思考を吹き飛ばすように頭を振る

誰かが死んでいく様は今まで何度も見てきた
それを見て何か特別な感情を抱いたことは一度もねェ
きっとこれからも自分の死以外を恐れることはないんだろうと思っていた

こいつが死ぬのが恐ろしい
俺を見上げるあの黄色い目から光が消えるのを見たくねェ

他の奴らも同じなんだろうか
俺たちと同じヴィランズでありながら、誰よりも優しいあいつを失うことを
俺と同じように、恐ろしいと感じているのだろうか

ふいに、ばたん！と勢いよく扉が開く
そのうちあの扉絶対建てつけ悪くなるぞ

「エイトフット！！肉体見つけた…！」

「っ！よくやった！」

思わぬ吉報にがたりと立ち上がる
ダルメシアとスカーは部屋に入るとへたりとその場に座り込んだ
朝からずうっと探し続けたんだ、体力も気力も限界だろう

「スカーちゃん達がこんなに頑張ったんだから！絶対助けてよね！」

「わかってる」

こっからは俺たちの番だ
眠っているマミに視線を戻し、苦しそうな顔を見つめる

あと少しだけ待ってろよ