一匹の悪役の話 (ページ23)

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19話ページ23

リクルーティングを始めて1週間がたった

あの日以来仮装を見て取り乱すことはなく、リクルーティングも順調
メンズリクルーターのアドリブにも平然と返せるようになっていた
合わせてくれるのが嬉しいのか、ジャックやアップル、マルフィは結構な頻度でアドリブを入れてくる
その様子も動画を撮られ、興味を持ってくれた人間達がまたリクルーティングを見に来る

観客は確実に増えていった

『いいですか？まず先程手に持った林檎を勢いよく落とす！
…そのまま小指以外の指を握る、これだけ』

アップルに向けて得意げな顔をしながらアドリブを入れると、シャッター音と笑い声が響く
まだ女性陣の中でアドリブを頻繁に入れるのは私だけ
スキャターが教えてくれたが、ネットでの反応はとても好評らしい

…こんなに楽しんでるのをモルガナ様に見られたら、鼻で笑われてしまいそう

ミスターが主に事細かに説明しないようそっと心の中で祈った

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基本リクルーティングが終わった後は、夕飯まで自由行動だ
何をしようかと時計を見ていると、とん、と肩を叩かれた

「…悪いが、ちょっといいか」

『…』

肩を叩いた張本人…エイトフットは、気まずそうに目線をそらしながら私に問う
彼は無言を肯定とみなしたのかそのままテラスに向かって足を進めた

「すまねェ、俺が悪かった」

深々と頭を下げる彼にとても驚いた
謝罪を聞けたら許そう、とは思っていたが、実はほんとに聞けるとは思っていなかった

というのも、彼は根っからのヴィランズ
手酷い仕打ちは散々やる上に、罪悪感などは持ち合わせてはいない
ヴィランズとはそういうものだ
謝罪など、やり方すら知らないだろうと思っていた
きっとこのまま許せる日はこないのだろう、と

時間こそかかったが、彼は慣れない謝罪を言ってくれた
マスターでもない、ただの仕事仲間の私に頭を下げて

それで十分だった

『許すよ』

「…は？」

『元々一回謝罪が聞けたら許そうと思ってたの
別に私が憎くて言ったんじゃないでしょう？』

「妙な気使うんじゃねー
…お前をヴィランズにした原因は俺の言葉だろ
それに加えてこのあいだの言葉…俺は別に許されたくて謝ってるわけじゃ」

『…もーしつこい！
あなたが原因じゃないわよ！
あのね、この道を選んだのは私だし、後悔もないの！』

きっぱりと言葉にしてから手を差し出す

『仲直りしましょ？』

彼は目を見開いた後、「変なやつ」と苦笑し手を握った