一匹の悪役の話 (ページ22)

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18話ページ22

--------ジャックハートside--------

出掛けてくる、と背を向けた彼女を見てなんとなく嫌な予感がした
マミを一人にしちゃいけないような、不吉な予感
僕の勘は結構あたるんだ

悪いとは思いつつも、買い物に出掛けるマミのあとを追いかける
なにもないならそれでいい
何事もなかったかのように帰るだけ

だけどやっぱり、僕の勘は正しかった

ぴたり、と足を止める彼女に気付き僕も足を止める
彼女の目線は真っ直ぐと前に向けられていた
不思議に思い僕も更に前を見ると、ハロウィンらしく仮装をした女の子達
彼女の目はそのうちの一人を捉えている

“アリエル”

マミの口がそう動くと同時に、女の子に向かって手が伸びる
ハッとそれに気付いた僕は、咄嗟に伸びた彼女の腕を掴んだ

「マミ」

『！！』

大きな黄色い目を更に見開き、僕を見るマミ
体はカタカタと震えている
それが怒りや憎悪によるものなのか、はたまた別のものからなのかは僕にはわからない
ただ確実なのは、彼女をこのままにしてはいけないという事だけ

『………ジャックハート…』

「奇遇だね、その格好どうしたの？いつもと違ってまた新鮮で可愛い！」

『…わ…私…』

「…大丈夫、よく見てごらん
あれはアリエルじゃない」

掴んだマミの手を優しく撫で、微笑む
恐る恐る女の子を確認し、アリエルではないのが理解できたのか彼女はほっと一息をついた

…でも何かおかしい、違和感がある
そもそも今までリクルーティングしていた最中にも、アリエルの仮装をしたゲストを見ることはあった
彼女は嫌そうな顔はしていたが、ここまで過剰反応したことはなかったはず
…これはあいつらに相談しといたほうがいいかもしれない

『ありがとう…落ち着いたわ…
ジャック、一応変装したのによく私だとわかったわね』

「そりゃわかるよ、僕の目を甘く見ないでほしいね！
たとえダルが女装したとしても僕は見つけてみせるさ」

『…あははっ』

「あっ、嘘だと思ってるだろ？ほんとだよ！」

まだぎこちないが、一応は笑顔を見せてくれたのを見てほっとする
ごめんね、嘘ついて
でも勘だけで君をつけていたなんて聞いたらびっくりしちゃうだろ？
だから今だけ、今回だけは騙されてて

僕の嘘で君が守れるならお安い御用

君の不思議な魅力に僕はとっくに虜なんだ
僕だけのアリス
だからどうか、笑ってて