一匹の悪役の話 (ページ14)

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9.5話ページ14

--------エイトフットside--------

モルガナ様の手下もリクルーティングにくるらしい

最初そう聞いた時は特になんの興味もわかなかった

へぇ、くらいの反応はした気がするが

それでも10分もたてば記憶から消えてたくらいだ

Mr.Vに抱えられたあいつを見た時は

同じ海の者としてなんだか情けなかった

なにしてんだか…と呆れた覚えがある

それが徐々に体の使い方を覚え

元々の物覚えの良さ、勘の良さも相まって

特訓をほぼミスなしでこなしはじめた頃には

モルガナ様もなかなかの手下を持ってるもんだと少し関心した

誰に聞いたんだかは忘れたが

俺ほどじゃねぇがあいつも仕事に追われてると知った時は

俺以外にも手下使いが荒いマスターをもったやつがいるとは、と

親近感を抱いた

テラスで一息つこうとして鉢合わせた時もある

なんとなく一本じゃたりねぇ気がして持ってきてたボトルの片方をあいつにくれてやった

足りねぇわけねぇのに、勘でも働いたか

手下になってから長くはねぇと聞いていたから、慣れたのかと聞いたら

陸に慣れたか聞かれたんだと勘違いした答えを返された

まぁ急に聞いたらそうなるよな、これは俺の言葉が足りなかった

初リクルーティングの日

あいつが数年前に小娘を探し回っていたあのサメだと知った

あのポーズを見た時

小指を立てて絡ませるのがユビキリだと、寸胴にいつだったか聞いたのを思い出し

こいつはもしやヴィランズではないのでは、という疑いが浮かんだ

小娘とユビキリをしたとあのサメは言ったはず

ならばそのポーズは

誰にアピールしてやがる

うじうじと様子を伺うのは性に合わねェ

リクルーティングが終わり

ホテルハイタワーに戻ったあいつを連れ

問い詰めた

『あんたなんか、仲間だと思いたくもない！！！！』

叩かれた頬がじんじんと痛む

怒りに染まった顔でそう吐き捨て、走り去ったあの女
俺は、追うことが出来なかった

あいつは、契約のためだと語りかけた俺の言葉で

傷つき
苦しみ
泣き喚き

“悪”へと堕ちた

別に罪悪感があるわけじゃねェ、俺は元からヴィランズだ
マスターのアースラ様のため、他人を蹴落とす
ほかの奴がどうなろうとしったことじゃねェ

それなのに

「…ｯ…なんだってんだよ…」

じくじく、と

頬以外の場所が痛みを主張した