応援 ページ25
一人戦い続ける東矢。
彼の奮闘している廃墟のすぐ横、一人の男が電話をしていた。
「……あぁ。あぁ、そうだ。すぐに来てくれるか?」
何やら切羽詰まった様子の彼の持つスマホの先、少年の少し高い声が微かに聞こえてくる。
「僕の友人の危機なんだ、できる限り急いでくれ」
そう言って男はスマホの通話を切り、またダイヤルを押し始める。
「もしもしヒーロー科ですか?集団で活動中の怪人がヒーロー一人と交戦中です。明らかに人手不足なので助けを要求したいのですが……あ、はい、今向かわせていると……わかりました」
……一方的に電話が叩き切られ、男はため息をつく。
「……頼みますよ、草薙さん……死なないで下さい……!」
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……その実、東矢は全身を打たれボロボロであった。
変身しようにも、あれは見た目だけでなく消耗も激しい。
こんな囲まれた状況ではかなり厳しいだろう。
しかも全員がそこそこの持久力と殺傷能力を有しており、一発脳を撃ち抜いたところで本能ごと縛られた怪人達は止まらない。
怪人というのは、時折完全に心を殺されてしまった哀れな者も数多くおり、そういう者達が戦う上で最も厄介なのだ。
「ぐっ……」
口から血を垂らし、全身が殴られ切り裂かれて血塗れとなっても、東矢は倒れない。
減るどころか次々と増えていく怪人の群れを前に、広範囲の殲滅を苦手とする拳銃オンリーでは分が悪すぎる。
しかし、東矢は気合いだけでその足を踏み留めさせ、拳銃の引き金を引き続ける。
これがマシンガンだったなら、ショットガンだったなら、あるいは彼女のような大きなハンマーだったなら。
そんなことが頭の片隅に浮かんで来たのは、とっくの昔のこと。
己に与えられた武器を、ここから誰一人として逃がさない為に力強く握り締め、振るい続ける東矢。
……人気の無い廃墟の中、銃声と肉の裂ける音だけが空しく響いていた。
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作者名:クロロフィル@深緑の指揮者 x他1人 | 作者ホームページ:http
作成日時:2023年3月8日 14時