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おっとご乱心ご乱心。
けれど乳母は慌てる様子もなく、飛び散るぬるま湯にも、転がる高貴なデザインの洗面器にも目を向けず、じっと私を見据えていた。
「人の心が、わかるの?」
問えば、簡潔に頷いた。
「あくまでこれはユニーク魔法ではなく、体質的なものなのでお気になさらず。」
「お、お気になさるわ!人の心が読めるなんてチートじゃない!」
「はあ……そうなんですか。私ほどの魔女であれば、ステータスにもなりませんよ。」
魔女界隈、深すぎる……。
というか乳母は魔女だったのね。
私の前では魔法なんて使ったこと無かったのに。
「ええ、貴女の前では、敢えて魔法は使わないで生きていました。……しかし、それは大きな間違いだったようです。」
乳母は指先は愚か、視線すら動かさずにいたのに、勝手に洗面器が浮かび上がり、毛足の長い絨毯に染み込んでいたお湯がぷかりと浮かび上がった。
濡れてしまっていたのに、今では完全に乾いてふわふわになってる……!
「私は貴女を甘やかしすぎた……未来に
「乳母……」
「魔法のことを忘れ、人畜無害なごく普通の人間でいられる時間が、お嬢様という可愛らしい女の子のお世話をする時間が、想像していた以上に楽しかったから。」
ここでようやく、乳母の顔に表情が灯る。
目を伏せ、申し訳なさそうに俯く。
「私は貴女の傲慢さに嫌気が差し、途中でお世話を投げ出してしまった時がありましたね。それでも、情が無かった訳ではありませんでした。貴女の見えないところから、ずっと、水晶を通して見守っていたんです。しかし……」
彼女の独白に、私までちょっと気まずくなった。
大好きな彼女に、ここまで心労をかけていたなんて……相当やばかったのね……。
「お嬢様には、雷が落ちる直前でも、死相が出なかったんですよ。」
「どういうこと?」
聞き返すと、乳母は丁寧に説明してくれた。
死相……死を予見する相。
数週間前だったり、または直前だったりに現れるそれが、私には死ぬ間際でさえ出なかったらしい。
「普通、どの生き物だって自分が死ぬ直前には死相が浮かぶものです。しかし、お嬢様には死相が全く浮かんでこなかった。しかも、崖から転落死したにも関わらず、心臓が止まり、体が丸めた紙屑のように無惨な姿をしてようとも。お嬢様は死んでいなかったんですよ」
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あさき(プロフ) - 好きな作品に出会っちゃいました (9月14日 19時) (レス) @page14 id: 2e9509526a (このIDを非表示/違反報告)
マナ石(プロフ) - チョコ狐さん» ご指摘ありがとうございます^^*修正しました (2021年2月7日 23時) (レス) id: 3b7a3734b9 (このIDを非表示/違反報告)
チョコ狐 - あのぉ、5のところの今になってはくことができてとこも嬉しいのところ、「吐くこと」ではなく「履くこと」、ではないですかね?間違っていたらごめんなさい。好きです!ころからも頑張ってください! (2021年2月3日 22時) (レス) id: fa7ecfc75a (このIDを非表示/違反報告)
マナ石(プロフ) - マザーグースさん» 誤字の報告ありがとうございます^^*早速修正してきます (2021年1月29日 0時) (レス) id: 3b7a3734b9 (このIDを非表示/違反報告)
マザーグース(プロフ) - 12のジェイドの台詞、「シェイド家」のところが「ジェイド家」になってますよ(コソッ)。面白いです、更新頑張ってください! (2021年1月29日 0時) (レス) id: 446891bd7a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:マナ石 | 作成日時:2021年1月13日 23時